斉藤君の日常


2010年 02月14日    晴れた。唯一の晴れだ。


さて、俺は思った。
卒業したら、俺たちは忘れられてしまう。
覚えておいてもらうためには、どうすればいいのだろうか?
それは簡単だ。
俺がいたって証拠を残せばいいんだ。ここは、やっぱり、落書きかな。


夜、俺は清川を呼び出した。
清川は寝むそうな感じで学校に来たけど、呼んだら来てくれるとこがこいつのいいところだよな。って、俺は思う。

「何だよ、こんな夜中に」

清川はそう自転車から降りずにあくびをした。夜中ってほどの時間でもないと思うんだけどな。
部活で疲れてんのかな?まぁ、いいか。

「俺、これから記念の落書きをしようと思う!お前も一緒にしようぜ!」
「はぁ!!?」

俺が笑顔でそう言うと、清川は驚いた声を出した。

「な、何で俺が!?そんなもん、三代川と一緒にやれよ!!」
「だって、三代川のやつ、家近くないじゃん。あいつ、電車通学だし。清川は見てるだけでいいよ」

本音を言うと、こんな夜学校に1人でいるのが怖かったんだけどさ。清川ってホラー平気そうだし。

「まぁ、いいけど。早く終わらせろよ」

ほら、清川はやっぱりいい奴だ。ずっと一緒だから、清川のことはよくわかってるんだよ。


落書きの定番はやっぱり、校舎裏かな。俺は自転車に乗ったまま清川と校舎裏に向かった。

「よし、この辺がいいだろう」

俺は持ってきたスプレータイプのものをカバンから出した。
てか、俺もこんなことよくやるよなぁ。でも、一生に一度の高校生活。はめをはずしまくったっていいじゃないか!

「何て書くんだって、もう書いてんのかよ!!」

俺が、校舎に向かってスプレーで文字を書いていると、清川のやつが驚いた声をだした。
もちろん、俺が書いたのは。

「やっぱり、ここは斉藤って書かなきゃな!」

でかくもなく、小さくもなくな大きさで、斉藤とだけ、書いた。清川の奴がため息をついた。

「ほら、もういいだろ。帰るぞ」
「もー帰るのかよー?」

清川は、俺を置いてさっさと自転車で行ってしまった。


あの落書き、同窓会の時とか大人になってから見るのが楽しみだ。
って、やべ。もうページがない。
また、新しいのを買うかー?




END




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斉藤君の日常、完結です。
これにて、斉藤君シリーズ完結です!

2010.2.14