鈴売り


鈴売りは今日も歩く。祝福と不幸を運びながら。
砂漠の上を、森の中を、空の下を。
鈴売りは、今日も行く。

「ちょいと、鈴売りさん。私にその鈴を下さいな」

街の中を歩いていると鈴売りは、女の人に呼び止められた。
鈴売りは、鈴がたくさんはいっているカゴを女の人に差し出した。

「ありがとう」

女の人は、祝福・魔よけの鈴を手のひらでつかみ取りし、たくさんの鈴を持っていった。
鈴売りは今日も歩く。祝福と不幸を運びながら。

「鈴は1つで十分なのに。あんなにとっていったらどんな祝福ににた不幸が起こるんだろうね?」

鈴売りは、女の人の走り去る背中を見てそう、呟いた。
祝福はありすぎると不幸になる。
不幸はありすぎると祝福になる。
不幸は祝福の起こったぶんだけ、跳ね返ってくる。
祝福は不幸の起こったぶんだけ、跳ね返ってくる。

「ねぇ、鈴売りさん。僕にその小さな鈴を1つ下さいな」

森の中を歩いていると鈴売りは、子リスに呼び止められた。
鈴売りは、鈴がたくさんはいっているカゴから一番小さな鈴を取り出し子リスに渡した。

「ありがとう」

子リスは、祝福・魔よけの鈴を掴み、行ってしまった。
鈴売りは今日も歩く。祝福と不幸を運びながら。

「小さな小さな祝福。きっと、跳ね返ってくる不幸はもしかしたら起こらないかもね」

鈴売りは、子リスの走り去る背中を見てそう、呟いた。
小さな祝福には祝福が返って来る。祝福が大きくなる。それは、自分で祝福を育てるから。




鈴売りは今日も歩く。祝福と不幸を運びながら。
砂漠の上を、森の中を、空の下を。
鈴売りは、今日も行く。



>>モドル|

小説家になろう!に投稿したものです。
短編ー。