たったひとつの奇跡


あれから何年たっただろうか。家から離れ、この遠い地に連れて来られて……。
そうか、2年がたったんだ。


僕は2年前、この地に拉致されて来た。街は賑わいクリスマス一色になっていたのを覚えている。
僕も浮かれて油断していたのかもしれない。
そんな時、急に口元にタオルのようなものをあてられ、何かを吸い込まされると僕は眠くなってしまった。もちろん、何が何だか解らず抵抗を試みたが、それは無駄な足掻きとなってしまった。


そして、目が覚めるとここに居た。何て言えばいいんだろう。もといた街……いや、国は先進国だったと思う。
今居るところは、内戦とかデモとかテロとかが頻繁に起こっている途上国だ。
どこの途上国がそんなことを起こしているとは限らないが、僕がもといた街でニュースで見たときそーゆう事を起こしていたのは全部途上国だった。
路上で住んでいるものもいれば、栄養失調のものもいた。文字がかけない人もいた。
僕自身、ここに連れて来られてたときは言葉がわからなかった。連れてこられた理由も解らなかった。
でも、そんな何も知らない僕も銃を持たされた。ここは、長い間内戦が続いている。
まるで、僕は戦って死ぬだめだけに連れてこられたようなものだと理解した。






でも、12月23日の朝。何かが起こった。それは赤かった。血とかじゃなくて、服が赤かったんだ。
そして、どっかから落ちて来た……いや、まるで空から降ってきたかのように雪の上に落ちていた。

「いったー!!! あーあ、あいつらだけで北極点帰るなよ。またミチルに怒られるなぁ。あいつら、俺が乗ってないことに気づいて戻ってきたりしないかなぁー」

最初、その赤いのは死んでいるのかと思った。でも、生きていてわけのわからないことをしゃべっている。
幸い、その赤いのがしゃべっている言葉はわかった。聞いた事のない言葉だけど、不思議と何言ってるか解った。
これは後から聞いた話だけど、雪の上に落ちたから無事だったんだって。

「ん? お前……ってマジ!!?」

その赤いのは立ち上がるなり僕を見て驚いた。さすがの僕もこれは驚いた。銀髪に青い目。何もかもが僕とそっくりなんだ。
いや、世界には3人そっくりさんがいるって聞くけど、まさかここまでとは……。

「あ! お前ってもしかして、2年前行方不明になったアレックスって奴!?」

赤いのは、僕の顔をまじまじと見ながらそう言った。何だか自分に見られているような奇妙な感じで落ち着かない。

「え? 何で知ってるの?」

僕は、僕の知らない奴が僕の事を知っていたため驚いた。新聞とかで見たのかな?

「やっぱりそうだ! 俺にそっくりなアレックス! 俺、2年前君に間違われたことがあるんだ。そんなことより、君の両親が心配してたよ?」

父さんと母さん。良かった、一応は元気でいるみたい。


僕は、突然誰かの刺すような視線を感じた。赤いのは気づいてない。その直後だ。僕たちに向けて銃弾が発砲されたのは。
だが、その銃弾は僕たちには当たらなかった。赤いのは酷く驚いていた。
どこから撃っているのか、僕にはわからない。僕は赤いのの手をひき、近くの殆ど壊れかけた建物の中に息を潜め隠れた。
暫くすると、僕たちがいた場所で銃弾戦が始まった。



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