たったひとつの奇跡


ここの町は、いやここの国全体が小さな国だった。そして、この国には2つの人種が住んでいる。今は僕には何でかわからないけど、戦っている。
自分の家も安全ではなかった。石が投げられることがあったから。それでガラスが割れて怪我をするんだ。子供同士でも安全ではなかった。ましてや、人種違いの友達の家なんか訪問したら、見つかった時点で殺されてしまう。
地面にも、色々なものが落ちていてはだしだと危ない。でも、ちゃんとした靴を持っている子供たちは少なかった。必ず、どこかしら破けていたりしていた。
爆破され、今にも崩れてきそうな建物もあった。崩れた建物もあった。
とにかく言葉では表せないくらい壮絶だったんだ。人も、町も、国も。

「い、いったい何が起こったんだよっ!?」

赤いのは、さっきの銃弾戦の出来事に驚いていた。もちろん、僕だって最初は驚いた。

「ここは、長い間内戦が続いているんだよ。何でかは知らないけど……。ところで、君名前は? 何であんなとこに倒れていたの?」

さすがにずっと赤いの何て呼んでいられない。それに、赤いのは僕よりここのことを何も知らないのだ。

「ん? 俺? 俺は、サンタクロースのサンタ。倒れていたのは、乗り出していたらソリから落ちたんだよ。幸い雪の上だったし、受身も半分成功したから怪我はしなかったけどね」

ふーんと、僕は聞いていた。ん? でも、ちょっと待って!! この赤いの自分のこと何て言った? 確かに服装とかは、絵本とかで見たやつにそっくりだけど……違うとこは、おじいさんじゃないってとこだ。

「え? サンタってあのサンタ?」

僕はおずおずと聞いた。サンタはその問いににっこりと笑い、頷いた。まさか、本当にサンタがいたとは……。でも、今はそんなこと問題じゃない。はやくここから逃げないと。僕は外の様子を伺った。どうやら、銃撃戦は終わったようだ。

「おい!!」

突然後ろから声をかけられた。僕はさーっと血の気が引いていくのを感じた。
きっと、さっき銃撃戦をしていた奴等の1人だろう。殺されるかもしれない。僕は怖くて目を瞑った。

「こんなところで、何してるんだ? アレックス」
「え……?」

さっきと同じ声が聞こえた。でも、その声は鋭い声ではなくなっていた。僕は後ろを見た。

「ジェームズ!!」

仲間の年上の男の人がそこには立っていた。



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