たったひとつの奇跡
「これ、どうやって使うの?」
ジェイクが大砲をまじまじと見ながら言った。その言葉を聞き、耳の尖っている4人がニヤっと笑った。
「こうやって、使うんだよー」
サンタが白い袋を何か針のようなものでプスッと刺した。白い袋は、パンパンに膨れ上がっていた白い袋は風船が割れるようにパァンと音をたて、はじけた。そうすると、その反動が原因か大砲の筒からたくさんの光が空に向かって発砲され、敵味方関係なく1つづつ1人に降り注いだ。そして、様々なプレゼントの形になり、降り注いだ人の手の中で収まった。
「こ、これは……!!?」
ジェームズが驚いた声を出し、自分の手の中にあるプレゼントを見た。
「あけてみなよ。お前らいい子じゃないけど、クリスマスプレゼントだ」
サンタが楽しそうに笑った。ジェームズはそれをおそるおそる開けた。
「サッカーボール……」
ジェームズはプレゼントの中身を見て、呟いた。ジェームズの行動がきっかけとなり、他の人たちも次々とプレゼントを開けた。
「あ! これ、子供のころからずっと欲しかったスケートボードだ!!」
「腕時計だ!! これ、子供のころに欲しかったやつだ!!」
プレゼントを開けると、皆次々に嬉しそうな声を上げた。大人は皆、子供のころそして今も欲しかったものを貰いまるで、子供のようにはしゃいでいた。
ドミニクが貰ったものは、ボールペンだった。ドミニクはそれを大切そうに嬉しそうに見ていた。ジェームズも、子供に戻っていた。
「戦争なんて、バカらしいな」
誰かがそう呟いた。「こんな楽しい夜に戦いたくない、誰も殺したくない」と誰かが言った。皆、敵味方関係なく「そうだ、そうだ」と同意したように頷いた。そして、敵味方関係なく皆、はしゃぎはじめた。ジェームズにいたっては、何人かの人を誘い、サッカーを始めてしまった。
雪が降ってきた。キラキラと光る雪だ。まるで、この汚れた地上にある雪を浄化するような綺麗な雪だった。
「アレックス、君はプレゼントに何が欲しい?」
サンタが僕にそう言った。僕へのプレゼント……? 僕がこの世で一番欲しいものは……。
「家に帰りたい。父さんと母さんのところに戻りたい」
僕ははっきりとそう言った。サンタは笑った。
「よし! ミチル、エル、マーチ、ノエル!! ここに、ソリを!」
「そーゆーと思って、呼んでおいたよ」
ミチルがどこからか8頭のトナカイを連れてきた。そのトナカイの後ろには赤い大きなソリがついていた。そのソリの中には大きな白い袋が入っていた。
「っと、その前に服を着替えなくちゃ」
サンタは僕……サンタの服を着ている僕を見て、指をパチンとならした。すると、一瞬のうちに僕とサンタの服が入れ替わった。
「皆、乗れ!」
サンタの掛け声で、皆ソリに乗り込んだ。僕も戸惑っていたが、ソリに乗った。ソリは乗り心地がよかった。
サンタが、皆ソリに乗ったのを確認するとソリが浮いた。トナカイたちも空を駆けていた。
「おい! アンタは何者なんだ!!?」
ジェームズが、ソリの横に来てサンタに言った。サンタはニカッと笑った。
「皆がよく知っているサンタクロースだよ。メリークリスマス!!」
サンタがそう言うと、トナカイたちは大空にむかって駆け出した。ミチルの時計をこっそり見てみると、12時をずっとさしたままだった。他の時計もそうだった。
25日の朝、サンタの住みかに2通の手紙が届いた。
やぁ! サンタ!! 元気?
プレゼントをありがとう。アンジェラも凄く喜んでいたよ。
今年も起きれてばよかったなぁ。でも、寝ちゃったんだ。
そういえば、24日の夜僕の方にキラキラした雪が降ったよ!
また、何か奇跡を起こしたのかな? メリークリスマス!
ナイジェル
そして、もう1通は……。
家まで送ってくれてありがとう。
プレゼントの時間が心配だったけど、奇跡が起こっている時は24日から25日の間でずっと止まっているんだね。
朝、新聞を見たんだけど内戦は終わったみたい。テレビでもそうやってたよ。皆、仲良しにもどったって。
あと、素敵なプレゼントをありがとう。メリークリスマス!
アレックス
END
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はい、完結しましたー!
相変わらずのサンタはのほほんとしてますね。
今回は妖精さんたち大活躍。新キャラも登場です。
そもそも、アレックスがなぜこんなとこにいるかというと、クリスマス=奇跡=不戦の奇跡の方程式でなりました。
クリスマスはハッピーでないと。
第3弾にもわたったクリスマスシリーズ。
もしかしたら来年も書くかも!!?
2007.12.21
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