たったひとつの奇跡


「アレックス! アレックス!!」

心配するようなサンタの声が聞こえた。銃弾はかすっただけだったので、そんなに酷い怪我ではなかった。

「大丈夫だよ、サンタ」

僕は心配かけないように笑って言った。

「お前、グルだったのか!! さては、敵と内通していてここに来て、俺たちを一網打尽にするつもりだったんだな!! それで、あの計画をしったお前は爆弾を壊すためにこの、お前そっくりな奴を連れてきたんだな!!」

ジェームズが銃を降ろさずに、そう言った。その言葉で、銃を降ろしていた人たちもまた僕たちに銃口を向けた。

「なんて奴だ!! 今まで生かしてきてやったのに!!」

ジェームズの隣にいた男の人が言った。生かしたのも、拉致したのもそっちの都合で、僕には関係ない。僕が頼んだわけでもない。

「何を言う!! そいつらはお前らの仲間だろう!! 後から来たくせにえばりくさりやがって!!」

今度は原住民……ジェームズたちからすれば敵側のリーダー格のような男が言った。

「そうだ!! そいつらを使って、俺たちを殺そうとしたくせに!!」

聞き覚えのある声がした。僕は声の主を見た。そこにはあいつがいた。色黒の僕の友達。ドミニクだ。

「大体お前らは関係ない子供を拉致したり、やることがデタラメなんだよ!!」
「何だと!!? これは、神のお導きだ!! 生かしてやってたのに、こいつらは一番やってはならないことをした! それは、お前たちもだ!! 神を裏切ったんだ!!」
「そんなの神じゃない!! 神はもっと偉大だ!!」

暫くジェームズとドミニクの言い合いが続いた。あぁ、何となく解った気がする。なぜ、内戦が起こったか。それは、宗教観の違いだ。
僕たちは、原住民と移民との間でそれを黙ってみていた。だが、事態はさらに悪化した。敵、味方。それに今となってはどちらかわからない僕たち。彼らは、そんな僕たちに気にせず銃弾戦を始めたんだ。今回のはかなり激しい。

「皆! 僕の後ろにっ!!」

ミチルは特に銃弾がたくさん飛んでくる方向を向き、光の壁のようなものをはった。その壁に銃弾が当たると、銃弾はじゅっという音をたてて消滅した。だが、僕たちを護るにはミチルだけではたりなかった。反対側の壁はミチルの力が弱いため、効力が弱いらしい。そこから、銃弾は消滅せずに中に入ってきたのだ。その銃弾は、ミチルの後ろでしゃがんでいる僕たちではなく、その僕たちには当たらずミチルの方にいった。ミチルは気づいていたが動けなかった。

「「ミチル!!!」」

サンタとジェイクの声がかさなった。その時、25日を告げる鐘の音が、どこか遠くのほうで響いていた。



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