たったひとつの奇跡


「で、何があったの?」

ジェイクは僕の方に向いた。僕は全てを話した。拉致のこと、内戦のこと、サンタと出遭ったこと、サンタを身代わりにしたこと全てを話した。ジェイクは、ただ黙って聞いていた。

「もしかして、君はアレックス?」

話し終わるとジェイクが言った。僕はコクンと頷いた。
何でこんなに僕の知らない人が、僕のことを知っているのだろう? 行方不明になって有名になったのかな?
いつのまにか、東の空が明るくなっていた。

「多分、すぐに敵のアジトに連れて行かれると思う。それで、アジトに行ったら少し距離のあるとこで、爆弾を持った子供達を見ているんだと思う。あと、アジトの中に入ったら起爆スイッチを押すって言ってた」

きっと、僕の言っていることは正しい。サンタたちはもうすぐアジトに向かうと思う。いや、もう向かっているかもしれない。

「でも、アジトの場所が……」
「それなら大丈夫。エルが調べてくれたよ。3人も後から来るって」

僕がわからないと言おうとすると、すかさずミチルが遮った。最後の方は、ジェイクに言っていたみたいだけど、3人って誰だろう?

「なら、そろそろ行った方がいいね。ミチル、案内お願い」

ミチルはジェイクにそう言われると、歩き出した。僕たちもそれに続いた。


僕たちは敵のアジトへ向かった。アジトの前にはたくさんの人が居た。もちろん僕たちは隠れていたけど、まだ生きているサンタ、爆弾を持たされた子供たち、隠れているはずのジェームズたちに、敵。敵味方関係なく、そこには緊迫した空気がながれていた。

「お前、何をした?」

ジェームズが、サンタに言った。サンタは不適に笑っていた。

「なぜ、爆発しない? 確かに起爆スイッチを押したのに。お前、何をした?」

ジェームズ、いやそこにいる全員が不思議な存在のサンタ……多分、もう僕じゃないってわかっているだろうに、銃口を向けていた。だけど、一緒にいた子供達は何だかわけがわからなそうだった。

「なぁに、ちょっといじったのさ」

サンタはそう言って、爆弾を雪の中に埋めた。子供たちも同じ動作をしていた。
良かった……生きてる。僕は安堵のため息をついた。

「サンタ!!」

僕がため息をついていると、ミチルがサンタのもとへ飛び出していった。ジェイクと僕もそれに続いた。周囲の人の反応は、気にしないことにした。

「ミチル!? ジェイク!!?」

サンタは居るはずのない2人を見て驚いた。もちろん、周囲の人の反応は気にしないつもりだったんだけど、驚いているようだった。

「何で、お前たちがっ……」
「サンタが勝手にいなくなるからだろっ!! いつも、いつも僕たちに迷惑かけて、何巻がえてるんだよっ!! 勝手に居なくなって、怪我とかしたらどうするんだよ!! バカ、バカサンタ!!!」

ミチルは少し泣きそうな顔をしていた。心配だったんだ。もしかしたら、死ぬかもしれなかったサンタを心配していたんだ。

「わ、悪かったよっ……」

サンタは罰が悪そうに呟くように言った。その時、僕は気づいた。ジェームズが、サンタたちの方の銃口を向けていたんだ。サンタたちは気づいてない。

「サンタ、危ない!!!」

僕はいつのまにか飛び出していた。銃弾は、僕の腕を少しかすっただけで地面に落ちた。



  BACK|モドル|>>NEXT