たったひとつの奇跡
僕は、月の光に青白く輝く雪の上を歩いていた。これからどこに行こう。家に帰りたい。
でも、どうやって帰ろう? 何となく感覚で日付はこえただろうとはわかっていた。だが、突然一瞬だけ明るくなった気がした。
「あー!! やっと見つけたー!! ジェイク、サンタ見つけたよー!」
その光がやむと、金髪で帽子を被った小柄な男の子が現れた。気のせいかもしれないけど、耳が尖っているようにみえた。この子、どこから来たんだろう?
「え? ホント?」
その子の後ろから、首から鈴をさげた茶髪の男の子が現れた。どっちも知らない子だ。
「もう! サンタ、何やってるのさ!? トナカイたちだけもどって気さ、もう時間がないんだからねっ!! ちょっと、なにぼーっとしちゃってるの? まさか、また落ちたときに記憶なくしたとか言うんじゃいでしょーねー?」
金髪の子が僕に言った。あ、きっとこの子たちはサンタの知り合いだ。それで、サンタと僕を間違えてるんだ。
「ミチル、この子よく似てるけどサンタじゃないよ。顔がサンタみたいにナマイキそうじゃない」
ジェイクと呼ばれた子が僕を見て言った。ミチルと呼ばれた子も僕を見た。
「本物のサンタはどこ?」
ミチルはさっきの声と違い、厳しい声で言った。僕は、その声が怒っているように聞こえ、俯いた。
2人の視線が僕に注がれている。僕は罪悪感でいっぱいになった。何で、あんなことをしてしまったんだろう?
「サンタは……明日、僕の代わりに、死ぬ……」
僕は震える声で、そう言った。僕は、何だか泣きたくなった。
「なっ!? お前、何考えているんだよっ!! 何があったのかは、よくわからないけど、あいつは僕たちのサンタなんだぞ!! 世界でたった1人の!!」
ミチルは凄く怒っていた。今にも僕に殴りかかってきそうだった。
「落ち着きなよ、ミチル。理由は僕が聞くからエル、ノエル、マーチに連絡して。何か大変なことになりそうだから。もちろん、平和的に解決したいから、こういった場合サンタはどーするかわかるよね?」
ジェイクは子供を宥めるように言った。それに対してミチルは黙って頷いた。
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