ペテルギウス


「誰だって、一人は嫌だよ。俺だって嫌だ。でも、俺もペテルギウスと同じで一人だよ。 俺には記憶がないから、俺すらも知らない。一人が嫌だから、皆に好かれようと努力した。 でも……やっぱり家族が欲しい。そうだ、ペテルギウス。お互い一人なんだし、家族になろうよ。 そしたら、もう寂しくないよ。大丈夫だよ、俺たち二人ならいつかすばるを抜け出せるよ」

オリオンはしゃがみこんだ俺に手を差し出した。腫れた顔でニカっと笑うオリオン。
あぁ、やっぱりオリオンは羨ましいなぁ。そう思いながらも、俺はオリオンの手を掴んだ。
こうして、俺たちオリオン座は始まったんだ。

この後俺は、オリオンと一緒に父さんたちのお墓参りに行ったよ。
お墓に行くことで何かが変わるのが怖かった。でも、何も変わらなかったよ。
相変わらず俺は俺で、お墓の前でみっともなく泣いた。だけど、何でだろうね。たったそれだけのことなのに、少し心が軽くなった。
未来を意識できるようになった。もう、一人じゃない。家族がいるから寂しくない。
原因不明のイライラに襲われることもない。



この後は察しの通り、リゲルに会い、ベラトリックスに会い、双子に会った。
皆、俺があのままだったら会えなかったし、家族になれてなかったと思う。
もっといえば、オリオンと出会い、殴り合いの喧嘩するまでは、この世は絶望しかないと、父さんたちの所に逝きたいって望んでいたよ。
泣いて喚いて、殴ってすっきりした。まるで、子供みたいだけど、たまにはそれも必要なんだ。



いっそのこと、過去がなくなればいいのにって思ったことがある。
でも、過去はなくならないし、もし過去がなくなったら俺は俺でいられなくなる。
過去は今までの俺を作ってきたもの。絶対になくなりはしない。変えることも出来ない。
でもさ、未来は変えられるだろ? 今をどうにかすることによって、未来は無限に広がっている。
過去は溜め込まず、受け入れて、ただの過去にすればいい。
泣いて喚いて、その後思いっきり笑えばいい。それだけで、未来は変わる。



そろそろ時間が来たね。これで俺の話はおしまい。
過去は変えることができない。だから未来を変える。自分の力で、自分の手で。
未来はきっと……良い日だ。




END




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