カクレンボ


4年前、誘拐殺人事件が起きた。
4人の子供が誘拐され、2人しか助からなかった。最初と最後に誘拐された子。



博和は、学校帰りにある家を訪ねた。インターホンのない、古い家。庭は、草がぼうぼうで、まるで誰も住んでないかのような。
隅の方にはビニール袋に入った何かが大量に置いてある。

「おばちゃーん!」

引き戸の玄関先まで行って、声をあげる。返事はない。

「おばちゃん、いないのー?」

勝手に引き戸を開け、中に入る。中に入ると、テレビの音が聞こえてきた。
家の中は、埃まみれで、掃除が行き届いていない。それこそ、廊下は真っ白だ。

「おばちゃん、いるなら返事しなよ」

がらりと、テレビの音が聞こえてきた部屋の襖を開ける。

「博和くん、また来たの?」

中にいた中年の女性は、ゆっくりとした動作で博和を見た。
女性は、どこか疲れたような、寂しそうな顔をしている。

「また来たのって。来なきゃおばちゃん、大変だろ」

どかりと、女性とは反対側に座り、共に机を囲む。
机の上には、何枚もの茶封筒が置いてある。宛名は、全て同じだ。

「おばちゃん、また受け取ってもらえなかったのか?」

女性は、博和の問いに曖昧に微笑んだ。

「こんなことくらいしか、浮かばなくてね。それに、殺されてしまった子達の家族は、ここから離れてしまって何もわからないし……」

女性は、涙ぐむ。肩を震わしながら。

「おばちゃん。兄ちゃんは、病気だったんだろ?」

女性は、博和の問いに寂しそうに笑った。博和は、思わず口を紡ぐ。
女性の夫は、事件の後、娘をつれて逃げるようにこの町を出て行った。女性だけが、この家に残された。

「さて。博和くん。いつまでも、こんな陰気くさいところには、いちゃダメだよ。また、お母さんに叱られるよ」

苦笑する女性。
あの事件の後、女性は軽い村八分のようなものにあっている。この家に来るのは、今では博和ぐらいだ。
博和は、むう、と膨れる。確かに、あまりこの家に長いするのは、良くない。きっと、女性も1人になりたいだろうし。

「うん。今日は帰るけど、また来るね」

手をひらひらとふり、博和は家を出た。



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