平成百鬼夜行〜風人伝〜


ぶっちゃけると、俺は平成の世じゃなくて平安とか戦国とかちょっと大変だけど、リストラがなさそうな時代に生まれたかった。
だってそうだろ?
今じゃ再就職なんて凄く難しい。
ましてやリストラされたのが年老いた俺の親父ってんだから、もう再就職なんて出来やしない。
リストラってのは職がなくなる事。
職がないのに、物価が高い都会で暮らしていけると思う?
少なくとも俺に一家永田家はそうは思わなかった。


「何にもね――――!!!! コンビニすらない!!」

春休み、俺たち一家は田舎にある親父の実家の農家に引っ越してきた。
親父の実家は本当に田舎。
周りにあるものといったら、畑か田んぼか森か山とかそのへんだ。
コンビニやスーパーなんてひとつも無い。

「お兄ちゃん、文句言い過ぎ!! ここに来てもう3日たつんだからいい加減になれなよ。公園とか遊ぶとこも無いけど…結構楽しいよ?」

妹の翔子は順応性が高い。実際、大変な農作業とか田んぼの事とかよくやってる。
そのてん俺は全然駄目。ゲーセンとかにだって行きたい。
だってさ、地獄だぜ?
ばーちゃんの家から一番近いコンビニは隣の県にあるんだぜ?
これじゃあ月曜日と水曜日発売の週刊誌が読めないよ。

「ねぇ、お兄ちゃん。おばあちゃんからこの村に伝わる話聞いた?」

翔子が急に話を変えた。
俺は無言で頭にハテナを浮かべた。
ホントこいつと話してると何か疲れる。

「もう、まだ聞いてないの!!? 面白いのに!!」
「そりゃーお前は伝説とか好きだから面白いんだよ。俺はもっと現実主義者なの」
「でね、その話っていうのが凄いの!」

こいつ…人の話聞いてないな。
だからこいつといると疲れるんだ。
翔子はその後も凄い勢いでペラペラと話を続けた。

「でね、その話っていうのがね! この土地の守り神として祀られている風人(かぜびと)様の話なの!! おばあちゃんの話によると、あの風森(かざもり)の中に住んでいるんだって! 行ってみようよ! ってお兄ちゃんどこ行くの――!?」

翔子はそう言って俺の後を追った。



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