平成百鬼夜行〜風人伝〜


「どこって…帰るんだよ。コンビニもないし…」

俺はぶすっとした顔で答えた。

「何でよー!! 行ってみようよー! 私行きたい!!」

翔子がワーワーと騒ぎ出した。
うるさい奴め。

「行きたい、行きたい――――!!!!!」
「うるさい!! そんなに行きたいんだったらお前1人で行って来い!!」

俺は翔子のうるささに耳をふさいだ。
そして、翔子から逃げるようにスタスタと歩いた。
それでも翔子は俺の後を追ってきた。

「何でよ! お兄ちゃんは気にならないの!!?」
「気にならない。それより耳元で騒ぐな!! 鼓膜がやぶれたらどうするんだ!!?」

俺は少し怒鳴り気味で言った。
こいつ、女の子特有のキンキン声してるから騒がれるとうるさくてしょうがない。
ったく……。
キンキン声じゃなく、おとなしい妹が欲しかったぜ…。

「じゃあいいもん。お母さんにお兄ちゃんにセクハラされたって言うから」

……ハイ?
今、何て言いました?
俺の聞き間違いですか?
俺は無言で翔子を睨んだ。

「いつ俺がそんな事した? 俺は近親相姦の方ですか? え、おい!! 今度バカな事言ったらぶん殴ってやるからな」

しかもこいつ…まだ小学生なくせして、セクハラ何てどこで覚えてきやがったんだ。
俺が小学生の時はもっと純粋だったぞ!!
これだから最近の小学生は…。
だいたいこんな奴にセクハラするんだったら、万引きして捕まった方がマシってもんだ。

「じゃあ、何かおごってあげるからさ…行かない?」

翔子がおずおずと聞いてきた。
こいつ…俺を金で釣ろうって言うのか?
いい度胸してやがる。

「コンビニ探して、週刊誌買ってくるなら行ってやってもいいぞ」

釣られる俺も俺だけどさ。
翔子はにっこり笑った。

「じゃあ交渉成立ね。そうと決まれば出発よ!!」

翔子は俺が途中で逃げないように、腕をしっかり掴みひっぱっていった。
まさかこの俺が妹にズルズルとひっぱられる日がくるとは…。
てゆーか足痛いんですけど…。

「放せよっ!! 1人で歩けるっつーの!!」

俺がそう言うと、翔子はまるで何も無かったかのように放した。

「お兄ちゃん、早く!!」

翔子が走り出した。
何で走るんだよー。俺、走るの好きじゃないんだよなー。
と思いながらも、俺もしょうがなく走った。
風森を目指して。



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