平成百鬼夜行〜風人伝〜


あれから数日がすぎた日曜日。
別に対して変わったことは起きなかったくせに、ある騒ぎが起きた。
とゆーか、その騒ぎは俺が知らなかっただけで、随分前から起きていた。

「あんれ、うちの店もやられたんよ。あんたのとこもかね?」
「そうなんですよー。しっかり戸締りしてたんですけどねぇ。やっぱり鬼の仕業かしら?」
「ずったら、立花神社に頼むしかねぇべな」

これは俺の村にある商店街のばーさんと、若いお姉さんの会話。
ばーさんのとこは団子屋で、お姉さんのとこはパン屋だ。
そう、俺たちの村は今、店で売っている食べ物を何者かに取られるという被害にあっている。
因みに今、俺は親父と母さんに頼まれたものをスーパーで買い物をしてきたところだ。

「そういえば、父さんが高校生くらいのときも、こんな騒ぎが起こってたなぁ」

家に向かっているとき、親父が昔を懐かしむように言った。

「今も起こってるってことは犯人捕まってないのか?」

ここの警察は何やってんだろう。
にしても、皆色んなものを取られたわりには騒いでないな。
夜だから実感がないのか?

「捕まってないが、この騒ぎは昔から数年に何回か起こっててな。父さんは2回これを経験したよ。それで、随分昔に目撃者がいたんだ。その証言によると、犯人は赤い着物で下駄を履いた赤毛の男の子。そして、頭には小さな2本の角があったそうだ」
「角〜!?」

俺はマヌケな声を出した。
誰だよ、目撃者。夜だから自分の子供とか孫とかと見間違えたんじゃねぇの?
それに角って何だよ。キリンか? サイか?

「そう、角。ほら、さっきの人たちが言ってただろ? 鬼の仕業だって。古い伝説によると、風森には鬼がいて、風人様と一緒に遊んでるらしい。で、腹が減ると人里のものを取っていくんだ」

親父はいつもの笑顔で言った。
鬼……ここは、鬼までいるのか。なんか、この伝説もホントっぽいぞ。

「今回もきっとその鬼だろう。いつも、村長さんが立花神社の神主様から風人様に頼んで止めてもらってるんだよ」

親父はそう続けた。
もしかしたら、その伝説をもじった泥棒ってことは考えないのか?
あー……何か、巻き込まれそうな予感。



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