クリスマスの奇跡


皆はサンタクロースを信じるかい?
僕は信じない。
だってサンタクロースは僕の願いを叶えてくれた事は無いから…。


12月24日の朝、僕はものすごい音で目が覚めた。
何かが壊れた音と、何かが落ちる音。
僕はまだ眠い目をこすり、外を見た。
他の子たちも何人か窓から顔を出し外を見ていた。
何人かは外に出てきて、地面に倒れている赤いものをおそるおそる見ていた。

「さぁ、どいて! 道を開けて!!」

ずんぐりしたおばさんが怒鳴りながら現れた。
院長だ。
僕の嫌いな院長だ。
院長は、その赤いものを起こした。
僕は目を凝らした。
その赤いものとは…人だった。
何でこんなところに人が倒れているんだろう?
僕はまた目を凝らした。
よく見ると、その赤い人の周りに…何か、赤い破片が落ちている。

「皆どいて!!」

また院長が怒鳴った。
うるさいなぁ〜。
僕は窓を閉め、またベッドに入った。


次、僕はけたたましい放送の音で目が覚めた。
どうやら朝食の時間になったみたいだ。
僕は急いでパジャマから洋服に着替え、走って1階にある食堂に行った。
皆はもう席についていた。
僕も…院長に見つからないように席についた。
院長は時間に煩くて、ちょっとでも遅れるとまるであひるみたいにガーガー言い出すんだ。
テーブルにはロールパンが2個置いてあった。
味も何もついてないし、少しパサパサしていて少し不味かった。
きっと…賞味期限がきれてるんだろう。
たまには僕も焼きたてのパンが食べたいよ。
それか…いつもパンばっかりだから、もっと他の物が食べたいよ。

はっきり言って、ここの孤児院はクリスマスだからといってクリスマスツリーを飾るって事もしないし、大人たちからのプレゼントもない。
まぁ、プレゼントはちょっと惜しいけど、クリスマスやサンタクロースを信じていない僕にとって別に居心地が悪いわけではない。
え? 何で僕が孤児院にいて、サンタクロースを信じてないかだって?
それはね…僕のママはずいぶん前に死んじゃったんだ。
それまではサンタクロースだって信じてたさ。もちろんクリスマスの奇跡ってやつも。
でも、ママが死んじゃってパパと僕だけになっちゃって…。それで、パパは仕事が忙しいからって僕をここに預けたんだ。
だから僕は孤児院にいるけど、孤児じゃない。でも…まだパパは僕の事を迎えに来ない。
でもさ、僕はそんなにワガママじゃないと思うけど、クリスマスぐらいはパパと一緒にいたかったよ。
誕生日でもなく僕はクリスマスにパパと一緒にいたかった。
もしかしたらクリスマスの奇跡が起こるかもしれないから…。
だから僕は毎年サンタクロースに手紙を書いていた。

――――パパと一緒のクリスマスが過ごせますように――――

でも、サンタクロースは僕のその願いを叶えてくれなかった。
初めのうちはサンタクロースも忙しいんだと思ってた。
でも…だんだんその願いを書き続けているうちにバカバカしくなって…。
サンタクロースはいないって事がわかって……その手紙を暖炉に投げ捨てた。

あ、全然関係ない事だけど…さっき院長が僕の事呼びにきたよ。
朝食食べたらすぐ来いって。
一体なんなんだろう?
めんどくさいなぁ……。



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