クリスマスの奇跡
「来たね、ジェイク」
僕はあの後ちゃんと院長室に行った。
相変わらず院長はずんぐりしていて厚化粧だ。
院長の隣に、僕と同じ年頃の銀髪の男の子がいる。
服装が…サンタクロースみたいだ。
あ、この子が朝倒れていた赤い人かな?
「この子、あんたも知っての通り朝、庭で倒れていた子だよ。どうやら何かの衝撃に頭を打ったらしく、何も覚えてないんだよ。まぁ、この子もさっき目がさめたんだけどね。それで、お医者様を呼んで見てもらったところ別にどこも以上がないって言うし…」
「それで…僕に何のようですか?」
院長は、話に割り込まれたのがムカツいたのか、僕を睨んだ。
でもしょうがないじゃん。
院長話長いんだもん。
「あんたに用ってのは、この子をあんたの部屋に今日1日泊めてあげて欲しいんだよ。あんたは1人部屋だしね。それに私が思うに、この子は3日前に行方不明になったマシューズさんのところのアレックスくんだと思うんだよ。あの子も銀髪青目だしね。それで、両親に電話をしたところ明日迎えに来るって行ってたんだよ。だから、その子泊めてやってね」
いきなりだな、このおばさん。
いつも前もって言いなさいって言ってるのは自分だろ?
「やあ、僕はジェイク=トプソン。宜しくね」
僕はアレックスに笑いかけた。
アレックスはぼーっとしていた。
「うん。俺は…多分、アレックス」
アレックスはぎこちなく答えた。
僕はアレックスを連れて部屋に戻った。
「ねぇ、アレックス。ワールド・ショップに行かない? ここにいても暇だし、それに外に出たほうがなにか思い出すかもしれないよ? あ、ワールド・ショップってのはたくさんのお店が入ってるところでね、いっぱいお菓子が売ってるんだ!」
僕がそう言うと、アレックスはわかってるんだか、わかってないような顔をして頷いた。
「よし! じゃあ決まりね! でも…外に行くのにそのサンタクロースみたいな服じゃ変だから僕のを貸してあげるよ」
アレックスはそれを聞いてぎこちなく笑った。
僕はそれを見て、クローゼットからセーターやらジーパンやらを取り出し、アレックスに渡した。
着替えている時もアレックスはぼーっとしていた。
「にしても、本当にサンタクロースみたいな服だなぁ…。帽子までちゃんとある。一体どこで買ったの? って聞いてもわからないか」
アレックスの着替え終わった後、僕はアレックスの服をハンガーにかけようといじっていた。
上着をいじってると、何かがポケットの中からドサッと落ちてきた。
「手紙と…鈴?」
僕はいそいでその2つを拾い上げた。
だが、僕は手紙の差出人の名前を見て、自分の目を疑った。
「どうしたの?」
アレックスが間の抜けた声で聞いてきた。
僕は自分の目がおかしくなったんじゃないかと思い、目をこすった。
でも、僕の目はおかしく無かった。
僕は驚きのあまり声をあげた。
「アレックス!! 何で君が僕が…前にサンタクロース宛に書いた手紙を持ってるのさ!!? 僕、手紙は燃やしたはずだよ? それに…これ、他の子たちのも全部サンタクロース宛だよ!」
アレックスは僕の隣に座り、手紙を覗き込んだ。
「本当だ。でも、よく覚えてないや」
僕は手紙をもとの場所に戻し、鈴をアレックスに渡した。
キラキラ光るきれいな鈴だった。
「きれいな鈴だね。音を鳴らしてみてよ」
アレックスはコクンと頷き、鈴をふった。
音が聞こえない。
「きれいな音だね」
アレックスが鈴をズボンのポケットにしまった。
え? 僕の耳がおかしかったのかな? 僕には音なんて聞こえなかったけど…。
「さ、早くワールド・ショップに行こうよ!」
アレックスは立ち上がり、僕が貸してあげたコートを羽織った。
僕もコートを着て、首にマフラーをした。
そして2人で外にでた。
外は寒かった。
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