クリスマスの奇跡


「ジェイク! 見て、あっちに大きなクリスマスツリーがあるよ!」

僕たちはワールド・ショップに来た。
さすがに24日だけあってクリスマスものだらけだ。
アレックスは屋根まで届くクリスマスツリーを見ると、そのツリーに駆け寄った。
僕は…どうやってあのツリーをこの中に入れたのかを考えていた。
ワールド・ショップは大きな建物の中に入っているんだ。
あれ? でも、ちょっと待って!
僕、アレックスにクリスマスツリーについて教えてないよ?
そう言えば…さっきもサンタクロースの事も知っていた。
どうしてだろう?

「待ってよ! アレックス!」

僕は急いでアレックスの後を追った。
アレックスはクリスマスツリーの隣にある家の屋根を見ていた。

「大きなソリだね」

僕はその屋根の上に載っている赤いソリを見ながら言った。
そのソリはサンタクロースが乗ってくるやつに似ていた。

「あれ、俺のソリじゃない」

アレックスがソリから目を離さずに言った。

「え?」

僕は無意識のうちに声が出てしまっていた。
アレックスは悲しそうな顔をしていた。

「見て! あっちにはサンタがいるよ!」

アレックスが急に走り出した。

「アレックス!!」

僕はいそいで後を追い、子供たちにプレゼントを配ったり、一緒に写真を撮ったりしているサンタのところの列に並んだ。

「見て! この手紙、サンタに出すの!!」

僕たちの前にいる男の子が友達にそう言ってるのが聞こえた。
その子は手には手紙を持っていた。
この子たちは…この子たちはまだサンタを信じているんだ。
あそこにいるのはニセモノなのに…。

「でも、お前サンタの住所知ってるの?」

一緒にいた男の子が言った。
さっきの子はにっこりと笑った。
それは嬉しそうに、楽しそうに…。

「だって、あそこにサンタいるじゃん! あのサンタに出せば大丈夫だよ」
「何? これ、サンタに出すの?」

アレックスが男の子の手から手紙をひったくった。
男の子は泣き出しそうな顔をしていた。

「何やってるんだよ!! アレックス! ……ごめんね。ほら、返すよ」

今度は僕がアレックスの手から手紙をひったくった。
そして、男の子に返してあげた。

「その手紙、暖炉に投げてみなよ。そうすれば、暖炉の煙が誰よりもどこよりも早くサンタに届けてくれるよ」

アレックスが手紙を指さしながら言った。
男の子たちは不思議そうな顔でアレックスの事を見ていた。
が、男の子たちの順番が来たので、男の子たちはニセモノのサンタクロースに預け、プレゼントを貰い去っていった。
その時もアレックスの事をチラチラと見ていた。

「君はなんのおもちゃが欲しいかい?」

アレックスの順番になった。
ニセモノがにっこりしてアレックスに話しかけた。

「欲しいもの? 何でもいいの?」

アレックスがそう言うと、ニセモノは頷いた。

「じゃあ、おもちゃを作る人の手伝いが欲しい! あ、でもソリでもいいかな〜。壊れちゃったし…」

ニセモノはびっくりした。
もちろん僕だって。

「ア、アレックス! 向こうに面白いものがあるよ!」

僕はあわてて、アレックスをニセモノから離れた場所にひっぱって行った。



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