大空のむこう


人間って複雑だ。
俺はつねづねそう思う。
じゃあ、お前はどうなんだ? って聞かれたら少し困るけど…。
きっと俺も複雑なんじゃないかと思う。


「母さん、母さ―――ん!!! 俺宛にハガキ来た!!?」

俺は息を切らしながら家の扉を開けた。

「来てたわよ。ほら、合格だって!!」

母さんはにっこり笑い、俺にハガキを見せた。
俺はそのハガキを取り、まじまじと見た。

「うっしゃ〜〜〜〜!!!! あの名門校に合格だ!!! これで先生にいろいろ教えてもらえる。これで……俺の"空の果て"を見つけるっていう夢に一歩近づいたんだ!!」

俺はおもいっきり跳びはねた。
今日は今ままで生きてきた中で最高の日だ!!

「じゃあ、さっそく用意して行って来るよ。ここからじゃ結構時間かかるし、迷うって事も考えとかなきゃいけないからね!!」

俺はそう言い、ドタバタと階段を上がり自分の部屋に行った。
思い立ったら即行動、これが俺の性分。
俺はトランクをひっぱりだした。

「さってと。何を持っていこうかな」

まず、適当に服とか着るものをつめた。
勿論全部動きやすい軽装な。
帽子とゴーグルは今つけてるやつでいいだろう。
俺はその辺にちらかっている分厚い本を30冊位抱え、トランクに押し込んだ。
俺の部屋はほとんど本で埋め尽くされていて、いつも母さんに何冊か処分しろって言われていた。

「よし!! こんな感じでいいだろう!! あとは…道具箱かな。他の本とかはあとで送ってもらおう」

俺は左手で道具箱を掴み、右手でトランクと掴みズルズルと階段を下りた。

「じゃ、母さん行ってくるね! 他の本とかは後で送っといて」

俺はハガキとサイフを掴み、被っている帽子の中に入れた。
大切な物はここにいれるのが俺の癖だ。

「はいはい。ちゃんと電車で行くのよ? 飛行機で何て行っちゃダメよ?」

母さんは俺の事を心配そうに見た。

「わかってるよ!! ちゃんと電車で行く。じゃ、行って来る。母さんも元気でね」

俺は意気揚揚と家を出た。

「気をつけてね。クウも元気で!!」

俺は振り返った。家の前で母さんが手を振っている。
ちなみにクウってのは俺の名前。

「俺、頑張ってくるからね―――!!!」

俺も手を振りかえした。
想像していた涙の別れとはちょっと違ってたけど、しめっぽくなくていいか。
俺は空を見た。

「絶対見つけてやるぞ。"空の果て"」



モドル|>>NEXT