大空のむこう


「やあ、クウちゃんお出かけかい?」
「学園に合格したんで今から行くんです」
「そうかい。迷わないようにね」


俺は駅に着くまで1人の人にしか会わなかった。
実際ここは少し大きな村だが、ここに住んでいる人がだいたい農家とか酪農とかの人で個人の土地は広く、お隣さんまでの距離が少しある。
勿論俺の家も農家!たまに俺が変なもの作ってるけどね。
ちなみに今俺は汽車の中でくつろいでいる。学園はここからだと不便って事もあって3〜4日かかる。
まぁ、入学式はまだ随分先だけど早いことにこしたことはない。

「早く学園に着かないかな〜」

俺は窓を開け、外を眺めた。
景色が飛ぶように過ぎていくのがわかる。

突然、コンパートメントの扉が開いた。
それと同時に1人の背の高い男の人がガチャガチャとなにやら音をたてて入ってきた。
そして俺の斜め前に座った。

「っかしいなぁ〜……。何で急に壊れたんだ?」

その人は手にラジオを持っていた。どうしたんだろう?

「どうしたんですか?」

俺はその人におずおずと話しかけた。

「ん? あぁ、ラジオが壊れたみたいなんだ」

男の人は1回俺の方を見たが、またすぐにラジオを直す作業に取り掛かった。
直す作業と言っても…叩いたり、振ったりしてるのは直す作業と言っていいのかよくわからないけど…。

「ちょっと見せてください」

俺がそう言って手を伸ばすと、男の人はすんなりとラジオを渡してくれた。
俺は自分の脇に置いてある道具箱の中から、ドライバーをひっぱりだした。
そして慎重にネジを外し、中を見た。

あーなるほどね。
こんなにホコリがついちゃってるよ…。
きっとこれが原因だろうなぁ〜。
今度は道具箱の中から小さな箒をひっぱりだし、中のホコリを取った。

「どうだい? 直りそうかい?」

男の人が俺に聞いた。俺はある程度のホコリを取り終わると、ネジをしめその人にラジオを返した。

「これで大丈夫です。どうやら、ただホコリがつまってただけみたいです」

男の人はラジオを受け取ると、さっそくスイッチを入れた。
ラジオから音がする。
初めはただ…ブーとかジーとか言ってるだけだったけど、だんだんとラジオらしくなっていった。
何か…さっきまで沈黙を守ってた奴が急に叫びだしたって感じ。



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