大空のむこう
男の人の顔がパァと明るくなった。
「ありがとう!!俺、機械とか全然駄目で…。君、名前は?」
わーすっごく嬉しそう。
こっちまで嬉しくなっちゃうよ。
「俺ですか? 俺は、クウ!!」
俺はお礼を言われて、照れ笑いをしながら言った。
直してあげて良かったなぁ〜。
「クウ…君か。ちょっと呼びにくいからクウ坊でいいかい?」
「え…はい? クウ坊?」
俺は思わずすっとんきょうな声を出した。
俺にもこんな声が出せたんだなぁー。
「よしっ!じゃあ、決まりな。俺は私立探偵をやってるレンって者だ。宜しくな!」
え? 俺、まだいいとも何とも言ってないのに勝手に決まっちゃったよ!!
俺の拒否権なしですか!!?
もし、今の心境を効果音で表すならきっとガビン!! だと思う。
しかも…クウ坊って聞き間違ったらクーポンになりそう…。
「でも、何で探偵さんがこんなところにいるんですか?」
俺はちょっと気になったので聞いてみた。
レンさんは急に深刻な顔になった。
「それがな、実は…行方不明とゆーか誘拐されたいいところのお坊ちゃんを探してほしいと依頼が入ったんだ。依頼といっても向こうについてから詳しい事は説明すると言われたから、それ以外の事は知らないんだけどな。そーゆー君はどこに行くんだい?」
レンさんが頭にハテナを浮かべた。
俺は自慢げに笑った。
「聞いて驚かないでくださいよ!!何と、俺あの名門のホワイト・ブルー学園に行くんです。今年入学するんですよ」
レンさんは驚いたように口をポカンと開いた。
さすがホワイト・ブルー!!皆知ってるんだなぁ〜。
「え? ホワイト・ブルー? この汽車はホワイト・ブルーには行かないよ?」
ん? レンさん、今おかしな事を言わなかった?
「……は?」
俺は自然に声が漏れた。
きっと俺の聞き間違いか何かか…レンさんが間違えてるんだ。
「だから、この汽車はホワイト・ブルーとは反対方向のサンシャイン行きだよ?」
「え? 何言ってるんですか? だって、この汽車…俺、ちゃんと確かめ…てない!!!」
最後の方、俺が大声で言ったのでレンさんがびっくりした。
そうだ…俺、ホワイト・ブルー行きのホームにはちゃんと行ったのに…。
ちょうどこの汽車が来てたから…急いで確かめずに乗っちゃったんだ…。
あぁ!!何て俺はバカなんだ!!!
あれほど確かめるって決めてたのに!!
あれほど母さんに言われてたのに!!
あんたは方向音痴だからちゃんと確かめなさいって…。
「レンさん…。後で、ホワイト・ブルーまで連れて行ってくれませんか? 俺、最高級の方向音痴なんです。あー!! もう!! 俺、このままだと一生絶対たどり着けない!!」
俺は頭を抱えた。
レンさんは…暫く何かを考えていたが、何かを思いついたように手をポンっとやった。
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