大空のむこう


俺たちは来た道と同じ道を戻った。
まさか、ホワイト・ブルーに行かせてもらえないからって自分で誘拐を考えるとは思わないよね。
それにこれが、もし本当の誘拐だったらここに犯人がいるはずだもん。
きっと写真の踏み切りも電話の踏み切りの音も臭いっていうのも何かのヒントだったのかな。
誘拐犯を演じた人も大変だったろうに。
あのタイミングで電話がかかってきたのもなんかのヒントかな?
ほら、電車の時間は決まってるし駅員さんならちゃんと電車の時間とか把握してるもんね。



俺たちはだんな様のお屋敷に戻ってきた。

「お前、うちの父さんを説得するとか言ってたけどどうやって説得するんだ?」

門が開いたと同時にサンが言った。

「んーあんまり考えてないけど、平気だよ。実は俺もホワイト・ブルーに行くんだ。俺も“空の果て”を探してるんだ」

俺たちはそんなたわいもない話をしながらだんな様の部屋へ行った。
部屋に入るとだんな様はサンを見るなり、抱きしめた。

「心配したんだぞ! 無事でよかった……。お前に何かあったらこの家はどうなるんだ。跡取りのお前がいなくなったら……」

だんな様が言い終わるいなや、サンはだんな様を突き飛ばし、だんな様から離れた。
だんな様は驚いていた。

「……サン?」
「俺は、俺はあんたの人形じゃねぇんだよ! 俺にだってやりたいことはあるんだ!! 心配なら何であんたがこねーんだよ!!」

サンは少し泣きそうな顔をしていた。

「だんな様、あの私が口出しするようなことではありませんが、サン君は貴方がホワイト・ブルーに行ってはいけないと言ったから、サン君はこの誘拐事件を考えたそうですよ」

レンさんが優しくサンの頭を撫でた。
もしかしたらサンはきっと自分の父親が来て、心変わりすることを望んでいたのかもしれない。
無事なら、なにやってもいいって感じの。
って言えば聞こえはいいきえど、ちょっとファザコン入ってるよね。
だんな様はサンを睨んだ。

「サン、お前は何てバカなことをしたんだ。自分がしたことをわかっているのか? それにホワイト・ブルーだって? 父さんに内緒で勝手に受験して、お前はまだ“空の果て”なんて言っているのか? あれはおとぎ話だ。いい加減諦めなさい」

「おとぎ話なんかじゃない! “空の果て”は本当にあるんだ!!」

俺は思わず声をあげていた。
サンの方を見ると、サンも何かを言おうとしていたが俺の方が先だったらしい。

「“空の果て”は本当にある! だって、俺の父さんは、父さんは!!」

そう。俺の父さんは“空”に行って帰ってこなくなった。
だから父さんは“空の果て”を見つけてそこにいるんだ。

「少し時間をあげてみたらどうですか? 子供のうちは好きなことをやらせて成長させるものです。それにホワイト・ブルーって言えば超難関の名門じゃないですか。のちのちいいことがありますよ?」

レンさんが場の雰囲気を和ませるように言った。
だんな様は少しうーんとうなり考えていた。そして……

「それもそうだな。“空の果て”を抜きにすればあそこは名門だ。サン、ホワイト・ブルーに行くのを許可しよう。だが、帰ってきたら家の後を継ぐんだぞ?」

サンは少しびっくりしていた。
けど、すぐにコクコクと頷いた。

「クウ! ホワイト・ブルーに一緒に行こう! 一緒に“空の果て”を見つけよう!」

サンは楽しそうに、嬉しそうに笑った。




ここで、俺とレンさんは別れた。
俺はサンと一緒にリムジンでホワイト・ブルーまで行くことになったんだ。

「レンさん、色々ありがとう! また会えるといいね!」

俺はレンさんに手を振った。
レンさんも振り返してくれた。

「そうだな。じゃ、クウ坊にサンくん。元気でな」




こうして俺の最初の冒険は終わった。



BACK|>>モドル

はーい。やっと一部完結です。
次からはホワイト・ブルーになります。
新キャラ続々登場です!

by銀