ポラリス


光を抜けると、僕たちは北斗七星のアジトにいた。

「な、何でお前たちここにいる? どうやって抜け出した?」

アルカイドが目を丸くして僕たちのことを見ていた。絨毯は床にパラリと落ちた。

「アルカイド、お前は三つの間違いをおかした。一つ目に俺はすばるに居たということ。 二つ目に俺はあそこによく遊びに行っていたから、脱出方法も知っているってこと。 三つ目に、俺たちを誰だと思ってる? オリオン座だぜ?」

オリオンは不適に笑った。やっぱりオリオンはサイコーだ! カッコいいし、何でも出来る。僕もオリオンみたいになりたいな。 

「さぁ、かかってきな。アルカイド。北斗七星とオリオン座の決着をつけようじゃないか」

アルカイドはオリオンの挑発に震えている。きっと、悔しいんだ。

「アルカイド! こんな奴、早くやっちまおう!」

アルカイドの隣に居るメグレズが興奮して言った。他の北斗七星も口々に「そうだ、そうだ!」と同意した。
アリオトだけは、何も言っていなかったけど。暫く睨み合いが続いた。お互いがお互いに飛び掛ろうとした瞬間!

「双方、そこまで!」

まるで時間が止まったみたいだった。オリオンもアルカイドも、飛びかかかる体勢で固まってしまったのだ。
いつの間にか四人の男の人が北斗七星とオリオン座の間にいた。いつ来たのか、どうやって来たのか僕にはまったくわからなかった。
この人たちが何なのかも。

「ペガサス座」
「まったく気付かなかった……。いつ来たんだ?」

オリオンとアルカイドはお互い拳を下ろした。

「君たちが飛びかかろうとした時だよ」

長身の人がにっこりと微笑んだ。にしても、彼らは一体誰なんだろう?

「ねぇ、ペテルギウス。彼らは一体誰なの?」

カノープスも僕と同じことを思ったみたいだ。そうペテルギウスに聞くのが聞こえた。

「彼らはペガサス座。すばるの監視者だ。長身の人がアルフェラツ、黒人の人がアルゲンプ、小柄な人がシャート、 眼鏡の人がマルカブだ。彼らの仕事は監視と、すばるのルールを破ると罰を与えるんだ。 その罰とはすばるで貰った魔力を削ること! 特に今回、北斗七星はすばる以外の人に迷惑をかえたからね。 魔法を良いことに使わなかった」

ペテルギウスは北斗七星から目を逸らした。僕は北斗七星を見た。
ペガサス座の人たちが北斗七星に手を翳し、まるで何かを吸いだしているみたいに見えた。
実際、何かうっすらと光りのようなものが見える。

「もう、普通の人に迷惑かけないようにするんだな」

終わったのか手を下ろし、アルゲンプが言った。厳しい口調で。
北斗七星は落ち込んでいるというか、ショックを受けているみたいで、その場にへたりこんでいた。

「それとオリオン。アルカイドを挑発するようなことはやめてくれ。 今回は君たちの事は見逃すが、オリオン。君がチケットを勝手に持ち出したりしなければこんなことにはならなかったはずだよ。 アルカイドがやり過ぎたのは事実だが」

シャートがオリオンの前に来て、そうため息をついた。

「次はもうないよ、オリオン」
「わかってますって。それより、最近俺の仕事ないみたいなんですけど、どうなってるんですか?」
「まぁ、待ちなさい。君に渡したいものがあるんだ」

今度はアルフェラツ。オリオン、ペガサス座の人たちと知り合いなんだ。仕事もこの人たちから貰っていたんだ。
確かにこの人たちなら不思議な仕事を持っていきそうだ。

「俺に渡したいもの?」
「そう。君はこの木箱に見覚えがあるだろ?」

マルカブがどこに持っていたのか、小さな木箱をオリオンに差し出した。オリオンは黙っていた。

「これは君の物だろう? 君のき……」
「いりません。そんな物知りません」

オリオンはマルカブの言葉を遮り、そう言い放った。

「そんな物いりません」
「本当に良いのかい? これは君の大切なものだろ?」
「いらないっていってるだろ! そんな物、さっさと捨ててくれ!」
「オ、オリオン! 一体どうしたの?」

マルカブにそう大声で言い放ったオリオン。 その普通では考えられないオリオンの行動にベラトリックスが驚き、オリオンの隣へ行った。

「大丈夫だよ、ベラトリックス」

そう言ったオリオンの笑顔はどこか悲しそうで、寂しそう。

「オリオン、オリオン」

リゲルがオリオンに抱きついた。オリオンは、ただひたすら大丈夫だよと繰り返していた。
僕たちは北斗七星のアジトを後にし、家に帰った。僕とカノープスは両親と仲直りし、お互いを理解することが出来た。
僕たちにも非があった。我侭ばかりで、母さんたちのことを全然考えていなかった。これからの僕たち家族は大丈夫。
きっと、もうすれ違わないし、ネバーランドのことを考えることもない。
だって、僕たちの正直な気持ちを言ったら、母さんたちわかってくれたもの。オリオンの言った通り、大人は悲しい生き物だったんだ。



オリオンは、完全じゃなかった。僕たちと一緒だった。でも、やっぱりオリオンは最高にカッコよくて、僕たちには何もわからない。
でも、僕にはわかったことがある。あそこにいったお陰で、僕は本物に興味を持った。そのためにも僕は大人にならなきゃいけない。
子供のままでは、宇宙に行くことはできない。だから僕は大人になる。だけど、悲しい大人にはならない。そう決めたんだ。



キラキラ光る星たちは僕にすてきな出会いをくれた。すてきなことを教えてくれた。
不思議なことはいつもどこかで起きている。偶然何かじゃない。子供が夢を持つ。偶然何かじゃない。


さぁ! 早く勉強しないと! これから忙しくなるぞ。


これで僕の話はおしまい。皆、聞いてくれてありがとう。




END




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