ポラリス
カノープスと引き離された後もどんどん落ちていった。とにかく、真っ暗闇の中を落ちているのかと思った。
でも、そうではなく、落ちていけば落ちていくほど星みたいにキラキラしたものが見えてきた。
何だか宇宙みたいだなとか思っていると、いつのまにか僕は無数の星に囲まれていた。
「ここは一体どこなんだろう?」
あたりを見渡しても星しかない。でも、息が出来るってことは宇宙ではない。
「誰かいないのー?」
僕は大声で声をあげた。そしたら、すぐに僕の声が跳ね返ってきた。山じゃないのに。
僕は皆を探して歩き出した。本当にここはどこなんだろう? 何だか心細くなってきた。
でも、同時に凄く神秘的で綺麗で、僕の頭から宇宙のことが離れなくなった。
だけど、やっぱり心細く、その場でしゃがみこんでしまった。このまま誰にも会えなかったらどうしよう。
そう思うと、自然と目から涙が出てきた。
「カノープス……、お前どこに行っちゃったんだよぉ……」
綺麗だけど、こんなところに一人でいるのは嫌だ。宇宙飛行士だって一人では宇宙に行かないじゃないか。
家に帰りたい。でも、どうやって帰ればいいの? 僕には絨毯もロケットも魔法もない。
このままここで飢え死にしてしまうのだろうか?
「 」
遠くで誰かの声が聞こえた。何を言っているのかは聞き取れなかったけど、僕は立ち上がった。だって、この声は!!
「カノープス! オリオン! 僕、ここにいるよ!!」
僕は涙を拭い、力いっぱいそう叫び、声が聞こえた方に駆け出した。
その間も、僕を呼ぶ皆の声が聞こえてきて、ついに見えた。
星に照らされてカノープスが、オリオンが、皆が絨毯に乗って僕の方に来てくれた!
「カノープス、オリオン!」
僕は嬉しくなった。同時に安心した。だって、カノープス、けがとかしてなさそうなんだもの。
「おー、ポラリス。無事だな。良かった、良かった」
オリオンがいつものようにニカっと笑う。
「ポラリス! ポラリス!」
カノープスが絨毯から飛び降り、僕に泣きながら抱きついてきた。
僕はやっぱり非力で、お兄ちゃんなのにカノープスを受け止めることが出来ず、倒れこんでしまった。
にしても、カノープス恥ずかしい奴。皆が見ているじゃないか。しかも笑顔で。
「オリオン、ここは一体どこなの?」
カノープスを引き離し、起き上がりながら僕はそう問うた。
「ここはすばるの地下。まぁ、反省室みたいなものだ。星しかなく、あたりには誰も居ない。皆、心細くなり、泣いたり謝ったりする。
過去の嫌なこととか思い出したりして。実際、こいつらもお前みたいにしょぼくれてたしな」
オリオンがそう言って、僕にウインクをした。それを聞いて、僕は何だか安心した。
だって、心細くなってたのは僕だけじゃなかったんだ。現に皆恥ずかしそうにしてるってことは、本当のことなんだね。
「俺はここ、結構好きだけどな。綺麗だし」
オリオンは楽しそうに笑う。うん、確かにオリオンの言う通り。こんな星、地上からじゃ見えない。
本当の宇宙はもっと凄いのかなぁ。何か、ちょっとワクワクしてきたぞ。
「そんなことよりオリオン」
「わかってるよ、ペテルギウス。ポラリスも、カノープスも絨毯に乗れ。
北斗七星に仕返ししてやろうぜ。どうぜ、あいつら俺たちがここでしょぼくれて、謝ってくるのを待ってるんだぜ。
ここからは、反省して謝らなきゃ出られない仕組みだからな。だけど、俺はここからの脱出方法を知ってるよ」
オリオンはそう言いながら、ペテルギウスと共に僕たちを絨毯に引っ張り上げた。
「さぁて、ペテルギウス、リゲル。やり方はさっき話した通りだ。頼んだぞ!」
オリオンがそう声をかけると、ペテルギウスとリゲルが頷くのが見えた。二人は北斗七星のように何かをブツブツと唱え始めた。
オリオンはオリオンで真っすぐに絨毯を飛ばした。僕には一体何が起こるのか全くわからない。
それは、カノープスもベラトリックスも同じみたいだ。顔を見ればわかるよ。
「見て! 光が見えてきた!」
カノープスが指差した先には確かに光が見えた。弱い光で今にも消えちゃいそう。
「よーし! 行くぜぇー!」
オリオンはその光に向かって絨毯のスピードをあげ、光の中へと突っ込んだ。不思議とその光は眩しくなかった。
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