Happy cooking
さすがの頼彦にもプライドはあるので、マズイといわれたままじゃ悔しかった。そのため、大学の帰りに近所の本屋によった。本屋なんて漫画とかメンズ雑誌とかを買うためにしか行かないが、今日は違った。
「これ、お願いします」
そう言い、レジに持っていったのは2冊の料理の本だった。もちろん、その本にはオムライスからハンバーグにコロッケ、カレーなどともりだくさんだ。もう、マズイなんて言わせない。そう頼彦は心に決めていた。
もちろん、その料理の本は初心者向きで、いきなり難しい料理を作れと言われても無理なので頼彦は料理超初心者向けのカレーを今晩の夕飯にすることにした。
「カレーなら……」
頼彦はぶつぶつ言いながら作り始めた。もちろん本を見てだ。さすがの頼彦もカレーは小学校の調理実習か何かで作ったことがあったので、なんとなくうまくいきそうな気がしていた。
材料を切る手つきはかなり危ないものだが、まぁ、どうにか出来ている。だが、いつ指を切り落としてもおかしくない手つきだ。
そして、ついにカレーが出来上がった。ジャガイモがこまかく切りすぎて全部溶けてしまった以外は、ちゃんとしたカレーだった。
その間、はやり葵はできた子なのでちゃんと食事の準備がすべて完了していた。
「今度はうまくできた?」
葵はご飯をお皿によそいながら言った。
「まぁ、不味くはないよ。きっと」
そう言いながら、頼彦はそのお皿にカレーをかけ、2人で食卓についた。
「いただきます」
葵がそう言い、カレーを口の中にいれた。頼彦はその様子を見ていた。そして……
「……お母さんの方がおいしい。食べられなくはないけど……」
と、言ったのだ。さすがの頼彦もそれにはカチンときた。そう、彼は味見をし、出来る限りのことをしたんだ。
「(どうやっても、美味いといわない気だな。この、ガキ……)」
頼彦は半ば意地になりながら自分の作ったカレーを食べた。
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