リゲル


学校に行かなくなった僕は家に閉じこもった。
それでも、僕の家の近くを通ると石とか投げてくる奴がいて、ママはそれでイライラしていた。
僕が学校に行かないことに対しても、イライラしていたし、文句を言った。学校に行けってパパに殴られたこともあった。
パパがあんなふうになっちゃったのは、僕のせいだったのかもしれないね。

「どうしてお前は学校に行かないんだ! どうして、そうお前は出来が悪いんだ!」

パパはいつもそう言って、僕を殴り飛ばした。パパにとっては僕の担任の先生が家庭訪問に来たりするのも煩わしかったのかも。
学校に行くようになれば、先生は来なくなるもんね。

「ごめん、ごめんなさい」

嫌われたくなかった。泣くと余計怒られるから、自分の部屋で泣いた。涙が枯れ果てるまで泣いた。
でも、どんなに泣いても涙は枯れ果てなかった。
このことを誰かに言えば、パパもママも誰かに連れて行かれてしまう。僕はそれが、嫌で、怖かった。パパやママと離れるのが。
パパとママを好きでいれば居るほど、僕のココロとカラダはズタズタになっていった。


僕は、すばるでもなるべく一人でいた。誰かと関わることが怖かったから。
ペテルギウスは怖そうに見えたし、北斗七星も話し掛ける雰囲気じゃない。でも、一人だけ。そう、一人だけ、異質な存在がいた。
それが、オリオンだった。




「坊や、坊や」

電車の中、窓の外を見ていた僕は、その女の人の声で現実に引き戻された。いつのまにか次の駅に停車している。

「はい?」

僕は声の主を見た。黒い髪の綺麗な女の人。ママより少し年上かも。

「私、黒い髪の男の子を探しているの。私の息子なんだけど、知らない?」

女の人はにっこりと微笑んだ。息子さん、迷子にでもなっちゃったのかな。迷子ってことは、小さい子かな。見てないはず。

「ごめんなさい、見てないです」
「そう、ありがとう」
僕が女の人にそう答えると、女の人はそう言い残し、そそくさとどこかへ行ってしまった。何だったんだろう。



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