リゲル


そういえば、ママの話はまだだったね。パパもそうだったけど、ママも僕が学校に行かないことでイライラしていた。
パパにそのことで何かを言われるのも嫌だったみたい。
パパはママの教育が悪いとか言い出して、喧嘩になるんだ。

「あんた何か生むんじゃなかった! あんたのせいで、こっちは毎日毎日……。あんたなんか生まれてこなければよかったのよ!」

パパが僕を殴る。パパとママが喧嘩する。
そのたびに、ママは僕にこう言っていた。何でかな、僕何も悪いことしてないのに。
僕は望まれて生まれてきた子じゃないってずっと思ってたよ。

「ごめんなさい、ママ」

生まれてきてごめんなさい。ママを困らせてごめんなさい、ママの子供でごめんなさい。
いつも、そうやって謝った。でも、僕はねママの子供でいたいんだ。ママが大好きだから。
いくら罵られても、どんなことを言われても。僕はママが大好きだから。


今でも、僕はどうして生まれて来たのかなって思うときがある。本当に望まれて生まれてきたのかなって。
僕がいなければ、パパとママは喧嘩することもなかった。僕がいなくなればよかった。
それが一番良いって思っていたのに、我侭かな。僕はパパとママといたかったんだ。
あの時のことは今でもたまに夢に見る。今は皆がいるから大丈夫だけど。
パパとママが、どうして僕にあんなことをしていたのかは、今でもわからないよ。八つ当たり? 僕のことが嫌いだったから? 
僕は何で生まれてきたの? 僕は電車の窓の外を見ながらそんなことを考えていた。
家に近づくたびに、どんどん変な気持ちになる。
悲しいの? それとも、怖いの? 
ねぇ、オリオン。オリオンならわかる? この気持ちが何なのか。



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