オリオン


「オリオン? ちょっと、どうしちゃったの? ねぇ、オリオン?」

声が聞こえた。心配そうなベラトリックスの声。俺はその声で戻ってきた。世界が戻る。

「オリオン、どうしちゃったの? 大丈夫?」

呆けている俺に、ベラトリックスが心配そうに声をかけた。リゲルも、心配そうにしている。

「大丈夫だよ、平気」

俺はそう、いつものようにニカっと笑う。こいつらには、心配かけたくない。
でも、誰かに話を聞いて欲しい。この海の正体は一体何なのか。

「何か、やっぱり心配。今日はもう、大人しくしていましょう?」
「本当に!? やったー!!」

リゲルが歓声をあげた。逆に、ベラトリックスはため息をついた。

「買い物行かないんだったら、俺たちもうすばるに行くよ」
「うん。僕も行く」

そう言った途端、ペテルギウスとリゲルはいそいで準備を始めた。
やっぱり、この二人。すばるに行きたがっている。何かすばるで、面白いことでもあったのだろうか?

「二人とも、あんまりすばるにのめり込むなよ」

これはいつも言う言葉。二人はいつも頷く。ちゃんとわかっているといいんだけど。

「あんまり遅くならないでね?」

いつものようにベラトリックスがそう言って二人を見送る。すばるに行くのは簡単だ。
すばるに入り、すばるに行きたいと思うと、一番最初にすばるに導いた風が吹く。
後はその風に乗れば、風がすばるまで連れて行ってくれる。

「わかってるよ。じゃあ、行ってくるから」

とベテルギウス。二人が外に出るとその風は直ぐに吹いた。

「行ってくるねー」

風に乗り、リゲルが大きく手を振る。俺たちも。二人が見えなくなるまで。

「……本当に早く帰ってくるのかしら。最近遅いし、心配だわ」

二人が見えなくなり、家に入る。ベラトリックスはここ最近いつもそう言う。まぁ、心配なのはわかるけど。
でも、確かにここのところ帰りが遅い。一体何をやっているんだ? 
そうだ。アルカイドも同じなのだろうか。それにあいつなら、この海のことを話せるかもしれない。俺はベラトリックスを見た。ベラトリックスを一人残して出かけるのは、嫌だけど……。

「ベラトリックス。俺、ちょっと出かけてきたいんだけど、一人でも大丈夫か?」

ベラトリックスはかなりしっかりしている。でも、女の子だ。ベラトリックスは大きなため息をついた。

「もう。遅くならないうちに帰ってきてね? オリオンは大人しく家に居たためしがないんだから」

ベラトリックスはそう微笑んだ。良かった。何だか少しテレちゃうな。

「いってらっしゃい。約束よ? 早く帰ってきてね?」

ベラトリックスはそう言って、コートとマフラーを持ってきてくれた。うん、約束するよ。ちゃんと。

「うん。ありがとう」

俺はニカっと笑い、コートを羽織る。ベラトリックスに見送られながら、俺は絨毯に乗り、星の住みかを後にした。
行き先は、アルカイドのとこだ。



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