オリオン
適当に昼を食べ、太陽が夕日に変わったころ、俺たちは星の住みかに向かっていた。二人が星の住みかで皆に会いたいって言ったんだ。
もちろん、帰りは送っていくつもり。いくら寒くてもな。
「あれ? 星の住みか、真っ暗だよ?」
星の住みかに近づくと、ポラリスがそう言った。確かに真っ暗だ。
おかしいな、この時間ならベラトリックスは絶対いるはずなんだけど。
「皆、出かけているの?」
カノープスが首を傾げる。そうか、もしかしたらホッカイロでも買いに行っているのかもしれないな。
でも、何だろう。この胸騒ぎは、何か凄く嫌な予感がする。
俺は絨毯をくるくるっ丸め、脇に抱える。ドアノブに手をかけると、嫌な予感は的中した。
「あ、開いてる……」
普通にドアが開いた。出かけているなら、戸締りをするはず。なのに開いた。開いたってことは、出かけてないってことだ。
じゃあ、何で真っ暗なんだ? 俺たちはおそるおそる中に入った。
「ペテルギウス、ベラトリックス! リゲル!!」
俺は仲間の名前を呼ぶ。まさか、何か事件に巻き込まれたとかじゃ、ないよな……?
「……オリオン……?」
不安そうなか細い声が返ってきた。ベラトリックスの声だ。真っ暗で、何も見えない。電気をつけるとこさえ、どこだかわからない。
俺は手から丸い光を出した。
「わぁ、オリオン凄い」
カノープスがまじまじと光を見て、そう言った。光は小さいけど、星の住みかを照らすには十分だ。
ベラトリックスの居場所もすぐにわかった。
「ベラトリックス!」
ベラトリックスは、テーブルの下に隠れて怯えていた。
俺は急いで、ベラトリックスに駆け寄り、テーブルの下から引っ張り出した。
「あぁ! やっぱりオリオンだったのね! 良かった。私、何が何だかわからなくて……」
ベラトリックスは少しパニックになってたけど、安心したような声を出した。そういえば、いつもより物が散乱してるな。
しかも、その物に躓いて、ポラリスがコケた。
「俺がいない間に何があったんだ?」
そう聞いた瞬間、誰も電気をつけていないのに、パッと電気がついた。
もしかして、停電だったのか? いや、停電なはずがない。他は電気ついていたし。
「わ、私。部屋を片付けていたの。ペテルギウルも、リゲルも帰ってきて手伝ってくれたわ。
でも、何かが妙だった。だって、家の中なのに風が吹いたんですもの。窓も閉まっているのに。
その風がやんだとき……やっぱり普通じゃなかったのね。知らない男の人がいて、二人と話していたわ。
それで、また風が吹いて真っ暗になったの。私、怖くなって……」
恐怖を思い出したのか、少し震えている。
「ペテルギウスたちは何か話していた?」
電気がついたから、俺は光を消した。何となくだけど、二人がどこに行ったのかわかる。
「そうね……よく聞き取れなかったけど、儀式って聞こえたわ」
あぁ、なるほど。やっぱりか。犯人がわかったよ。儀式と、変な風ってくれば、もうすばるしかない。
すばるがペテルギウスたちを連れて行った。儀式のために。このままだと、二人ともすばるから抜け出せなくなってしまう!
「皆! これから、すばるに行くぞ! 二人を止めないと!」
俺の呼びかけに、皆は答えてくれた。ベラトリックスはコクンと頷き、もう怖がっていない。双子に至っては、楽しそうな目をしている。
「よっしゃ、行くぜ。オリオン座!」
外に絨毯を広げ、急いで乗り込む。
ベラトリックスは戸締りをしっかりしていたから、一歩遅れたけど、皆が乗り込むと、絨毯は上昇した。上へ、上へと。
空に浮かぶ城を目指して。
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