ポラリス
映画は、主人公が学校で起きた出来事を問いただされる所だった。この後、主人公は無実の罪をきせられるんだったよね。
「この服で主人公たちに見つからないか?」
ペテルギウスが主人公の制服と僕たちの服を見比べた。確かに、主人公の制服(全部紺色だ)に比べると、僕たちの服はカラフルだ。
一応見つからないように隠れてはいるけど、少し目立ちそうだよね。
「大丈夫だろ。そんな長いこといるわけじゃないし」
オリオンが、チケットをポケットに仕舞おうとしたとき、チケットがまた光りを発した。
「え、な、何で?」
オリオンは突然のことで慌てていた。僕たちだって。そのうちに、誰だか知らない人の声が頭の中でした。
でも、何を言っているのかわからなかった。どこの言語なのかすらも。
どうやら、チケットを通して僕たちの頭の中に声が伝わっているみたいだ。 チケットからも同じ声が聞こえる。
「うわっ! 頭が……」
カノープスが頭をおさえてその場にうずくまった。僕も、頭が割れそうに頭が痛い。この間、風邪ひいたときよりも、頭が痛い。
「この声はアリオトだ。気をつけろ、何か仕掛けてくるぞ!」
ペテルギウスがそう言ったのが聞こえた。だけど、チケットからの声が煩くて、ペテルギウスの声はその声にかき消されそうだった。
知らない人の声はだんだんと大きくなっていった。
「うわぁ!? 引っ張られる!?」
チケットがいっそう明るく光り、僕たちは目がくらんだ。その瞬間、映画の中に入るときと同じ感覚が起こった。
でも、何だか少し違う感じ。ほんの少し、言葉では言い表せないけど。
だけど、誰もチケットを掴んでいないのに、どうしてこんなことが起こるのだろうか。
光りの眩しさに僕は目をつぶってしまったから、どうなっているのかよくわからなかったけど、これだけはわかった。
僕たちは映画の中から追い出されたのだと。
「北斗七星のアジトへようこそ。オリオン座の諸君」
頭の中の声と光りがやみ、目を開けると、僕たちは知らない七人に取り囲まれていた。
ここは映画館じゃないね。どこかの家の中みたい。僕たちはやっぱりどこかに引っ張られ、映画の中から追い出されたんだ。
でも、オリオンの話だとチケットを掴んでいないと映画から出られないのにどうして?
「ベラトリックスの言うこと、素直に聞いておけばよかったぜ!」
オリオンの声だ。オリオンは自分の前に立っている黒い髪の男の子を見ている。
この人がリーダーなのだろうか。七人の中に、一人女の子がいる。その子は、リーダーと思わしき人の隣に居た。
何か、リーダーの右側にはバンダナまいている男の子がいる。
「オリオンは、彼らとは知り合いなの?」
カノープスが隣にいたベラトリックスに聞いた。僕にはベラトリックスが頷いたのが見えた。
「彼らがさっき話していた北斗七星よ。
ボスのアルカイドとオリオンは、仲の悪いライバルなのよ。それと……魔法のチケットは、アルカイドが持っていたの」
僕とカノープスは、思わず顔を見合わせた。オリオンは、この人から勝手にとってきちゃったんだ。
でも、この人もそうゆう不思議な物をどこで手に入れてくるんだろう?
もしかして、さっきチケットを掴まなくても映画の中から出られたのは、この人たちが持ち主だったから?
「僕たちがチケットを掴んでなくても、映画の中から出られたのは彼らが持ち主だったから?」
今度は僕が問う。ベラトリックスは僕の方を向いた。
「そうだと思う。詳しいことはわからないけど」
「そこ! 何をしゃべってるんだ!」
バンダナの子がそう僕たちに指摘してきた。ごにょごにょとしゃべってたんだけど、バレていたのか。僕たちは途端に大人しくなった。
「魔法のチケットを返してもらおうか!! この……コソドロ!!」
アルカイドが何か汚いものを吐き出すように言い、周りの六人がジリジリと僕たちに迫ってきた。
これは、いわゆるピンチってやつなのだろうか。でも、そんな状況なのにオリオンはニカっと笑った。
「嫌だね。まだ、返さないね!」
オリオンは、脇に抱えていた絨毯を広げ、僕たちに目で合図を送った。
僕たちは誰もがその合図は絨毯に乗れということを理解し、絨毯に飛び乗った!
「北斗七星、おしかったな。でも、これで何度目だ? 俺たちオリオン座に負けた回数は!
俺は今ここに宣言する! お前たち北斗七星は、一生このオリオン座に勝てないことを!」
オリオンがそう高らかに言った瞬間、薄い膜みたいのが僕たちを包み、絨毯は凄い勢い窓を割り、外に飛び出した!
絨毯は上昇し、みるみるうちに北斗七星のアジトが遠くなっていった。
薄い膜はパチンと音をたてて割れたけど、あの膜は一体何だったんだろう? それに窓ガラスを割って脱出したのに、
不思議なことに誰もけがしてないし、ガラスの破片すら絨毯の上にはない。
「オリオン、お前最高だぜっ!」
「へへっ。当たり前だろっ! お前もナイスだったぜ!」
オリオンとペテルギウスがハイタッチした。確かにオリオンは最高だ。ペテルギウスの言う通り。
でも、ペテルギウスは何をしたんだろう? ナイスってことは何かをしたんだよね?
「さっきの膜はペテルギウスだったの? 僕、オリオンかと思ったよ」
「なんだと、リゲル。俺だってやるときはやるんだぞ。ガラスから皆を守るくらいの膜なら俺にだって楽勝さ」
「そうだよね。ごめんなさい」
ペテルギウスが、リゲルの頭をわしゃわしゃと撫でた。リゲルは嬉しそうに笑った。
そうか、あの膜はそうゆう膜だったんだ。だから、僕たちは皆けがしなかったんだね。
それにしても、オリオンと出会ってから不思議なことばかりで、凄く毎日が楽しい!
だって、今僕たちは世にも珍しい空飛ぶ絨毯に乗って飛んでいるんだもの! これがワクワクせずにいられないよ!
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