ポラリス


目を開けると、客席に戻って来ていた。ただ、入る前と違っていたのは客席に誰か座っていたことだ。
赤毛の女の子と、オリオンよりも長身の男の子。それに、小柄で茶色の髪がツンツンはねている男の子が、僕たちのことを見ていた。
トンガリ頭の子が、ズカズカと僕たちの方にやってきた。何だか少し怒っているみたいだけど……。

「ずるいよ、オリオン! 何で、勝手に魔法のチケットを使っちゃうんだよ!!」

男の子はやっぱり怒っていて、オリオンにそう詰め寄った。この子たちはオリオンの友達なんだろうか?

「ごめんよ、リゲル。この二人に早く使わせてやりたかったんだ。お前ならわかるだろ?」

オリオンはリゲルと呼んだ男の子の頭を撫でた。つまらないって、僕たちそんな顔してたかな。

「そんなことはどうでもいいのよ。オリオン! あなたに大切な話があるの」

今度は女の子が客席から立ち、こっちに来た。オリオンは女の子の方を向いた。

「さっき、ペテルギウスが言っていたんだけど、北斗七星はそのチケットを通して、 あなたを自分達の所に呼び寄せることが出来るんじゃないかと思うの。 じゃなかったらそのチケットを、大人しく渡すわけがないわ。 北斗七星、アルカイドなのよ?」

オリオンは、女の子の言葉を聞いてため息をついた。僕とカノープスはオリオンが何の話をしているのか、まったくわからなかった。
彼らが誰かさえも。

「それは考えすぎだよ。ベラトリックス。いくらアルカイドでも、この俺には勝てなかったんだよ」

オリオンはベラトリックスと呼ばれた女の子にニカっと笑いかけた。
女の子は少し赤くなっていたけど、でも僕たちにはやっぱり彼らが誰だかわからない。

「ねえ、オリオン。彼らは誰なの?」

カノープスが痺れをきらして、オリオンに聞いた。
僕もそれを聞きたかったし、言おうと思っていたから、カノープスに先をこされて、ちょっと悔しくなった。
僕はオリオンたちが話しているから話が終わるまで黙っていようと気を使ったのに。カノープスは、何て図々しい奴なんだ!

「あ、紹介がまだだったね。彼女はベラトリックス。長身の奴がペテルギウス。 二人とも俺を同い年で、ベラトリックスは頭の回転が速く、ペテルギウスは力がある。 小さいのはリゲル。お前たちの一つ下で、誰よりも足が速い。皆オリオン座のメンバーさ」

オリオンは自慢げに自分の仲間を紹介してくれた。
自慢できる友達がいるだなんて、僕はオリオンが羨ましくなったけど、気になることが一つ。

「オリオン座って何?」

僕がそう聞くとオリオンはニカっと笑って今度は僕たちのことを紹介した。
僕たちは皆と握手をし、友達になり、オリオンから「二人もオリオン座だから」と言われた。
僕たちはオリオン座が何だかよくわからないけど、何だか嬉しくなった。仲間になれたことが。
オリオンの自慢の仲間と友達になれたことが。もしかして、オリオン座っていうのは彼らのチーム名みたいなものなのかもしれない。 そう考えると、そのメンバーに入れたことがますます嬉しくなり、思わず笑顔になった。

「オリオン! 早くチケットを使おうよ。僕も映画の中に入りたい」

リゲルが目をキラキラさせながら、オリオンの腕を引っ張った。

「ちょっと! 人の話聞いてたの? これを使えばアルカイドの所に行ってしまうかもしれないのよ!」

ベラトリックスは少しイライラしていた。だけど、オリオンはそんなの気にしないというように笑った。

「大丈夫だって! 映画の方は大分進んじゃってるけど、まぁいいよな」

僕たちは、チケットを掴んだ。ベラトリックスもブツブツ文句を言っていたが、チケットを掴んだ。
さっきより人数が増えたから、何か狭く感じたけど、どうにかしてチケットを掴んだ。
全員が掴み終わると、またチケットがさっきのように光り出し、僕たちはスクリーンの中に吸い込まれた。
やっぱり気持ち悪くなる。一体、どうしてだろう?



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