ベラトリックス


「どうしたの? ベラトリックス」

まず、私を迎えてくれたのはリゲルだった。苦しい、わき腹が痛い。
今日は、ペテルギウスもリゲルもすばるに行ってないのね、良かった。

「どうしたんだ、ベラトリックス。何かあったのか?」

心配そうなオリオンの声。オリオンは買い物した荷物を預かってくれた。
ペテルギウスは、奥でこっちを見ている。早く言わなきゃ、早く!

「ペテルギウス、私……あの人に遭ったわ」

呼吸が整わないなか搾り出した声。リゲルとオリオンはお互い顔を見合わせ、首をかしげている。
何の話だかわかってないからだろうけど、ペテルギウスには通じたみたい。
ペテルギウスは手に持っていた本をパタンと閉じて、こっちに来た。どうにか、呼吸が整ってきた。わき腹ももう大丈夫そうね。

誰かがドアをノックする音が聞こえた。私は一気に血の気がひいた

「誰か来たみたいだよ」

リゲルがドアを開けようとしたが、ペテルギウスに止められた。
どうしよう、どうしよう。あの人だったらどうしよう。私のせいだ、どうしよう。

「裏口から外に出よう。オリオンとリゲルには後でちゃんと説明する」

ペテルギウスは私と違って落ち着いていた。
ペテルギウスは、大事なものをオリオンが持っているあのショルダーバックにつめた。
私も落ち着かなきゃ。そう思っているのに、ノックの音がするたびに、震え上げってしまう。

「早く、皆こっち」

私たちはペテルギウスについて、裏口からでた。
裏口って私たちは呼んでいるけど、窓のことね。ドアとは反対側に大きな窓があるの。いつも、ペテルギウスがいるところね。

「なぁ、一体何なんだよ。ちゃんと話せよ」
「わかってる。でも、今はちょっと待ってくれ」

ペテルギウスとオリオンが声をひそめて話している。私たちはこれからどうすればいいの。



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