ベラトリックス


「例え、太陽になったとしても、人を殺して手に入れた幸せなんて……そんなの本当の幸せなんかじゃない!!」

私がそう言い放つと、女の人の体がビクっとして、たじろいだ。
その後直ぐに、女の人はキっと睨み、近づいてきた。

「貴方みたいな子供に何がわかるっていうの!?」
「ベラトリックス!!」

ペテルギウスの叫び声。私は、みぞおちに衝撃を感じた。
まるで、ボールは当たってないがボールが当たったような感じがして、私は吹っ飛ばされ、壁に激突した。
声にならない痛み。痛いだけじゃない、何だかもの凄く気持ち悪い。お腹だから? 一体、何の魔法だったの?

「よくも! ベラトリックスを!!」

今度はオリオンの怒った声。
部屋の中なのに、オリオンを中心にして、風が吹き荒れ、何か小さい物が女の人に向かって飛んでいった。

「きゃぁ! 何なの、これ!?」

女の人の叫び声。何だかよくわからないけど、女の人の体から植物の芽のような物が生えてきた。
一体、どうなっているの? うぅ、まだ痛い……。芽はどんどん成長し、つるとなって女の人の体に巻きついた。

「ベラトリックス、大丈夫か!?」

オリオンが吹っ飛ばされてお腹を押さえている私の所に駆け寄ってきた。
オリオン、凄く心配そうな顔をしている。
私は、怖いのと痛いのと、オリオンと離れたくないのと、色々な感情がごちゃまぜになって、思わずオリオンに抱きついてしまった。
オリオンはびっくりしていたが、私の頭を不器用に撫でてくれた。

「おいおい。二人とも、そんなことしている場合じゃないだろ。我を忘れて魔力が暴走することだってあるんだから。 早くあの人をどうにかしようぜ?」

ペテルギウスが私たちの所に来て、少し呆れたように言った。
私は急に恥ずかしくなって、オリオンから離れた。オリオンはそれを見て笑っていた。

「皆! すばるからペガサス座の人とおじさんを連れてきたよ!」

突然、さっき女の人が鍵をかけたドアが開き、外からリゲルがペガサス座と儀式にいたおじさんを連れてやってきた。
そういえば、リゲル。姿が見えないと思ったら、すばるに行っていたのね。
全部の窓とドアに鍵がかかっているはずなのに、リゲルはどうやってでたのかしら?

「リゲル! お前、いつの間にっ……」
「僕だってやる時はやるんだいっ!」

驚いたオリオンの声と自慢げなリゲルの声。とにかく皆が無事で良かったわ。痛みもだいぶひいて来た。



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