平成百鬼夜行〜風人伝〜


1時間目は数学だった。
1つだけ言わせてほしい。
朝から数学なんて間違ってる!!

「永田くん…転校初日の1時間目に寝るって…度胸あるね……」
「何も言わないでくれ、三山。俺は自分が情けない!!」

本当に情けない。窓の外を見てたらうっかり寝てしまうなんて!!
太陽が眩しかったんだよぉ〜〜〜!!!!!
しかも丁度先生に指名されてたんだよなぁ…。
あぁ、何だか全てがどうでもよくなってしまった。
さらば、俺の転校初日。さらば、俺の新しい人生…。
どこからか、まるで木枯らしがふくような寂しい音楽が流れてくるようだ。

「おい、徹平。ちょっと来い」

突然その声によって、俺専用のスポットライトが消された。
ついでにいうと音楽も。
ようするに、そいつの声で俺は自分ワールドから現実ワールドに引き戻されたんだ。
俺は声の主を睨んだ。

「名前で呼ぶな、聖」
「お前も名前で呼んでんじゃん」

聖は、はっという不適笑いで言った。
むむむ、何だこいつ!! 超ムカツク!!!
相変わらず横には黒犬赤目の黒影がいるしさ!
いや、こいつは別に悪くないんだが…。
大体こんなデカイ犬が他には見えないっていうのが驚きだぜっ。
何で俺には見えるんだよ?

「で、何だよ? どこに行くんだ?」

俺は不機嫌な顔で聖に聞いた。
聖も不機嫌な顔だった。

「さっき樹木子のこと聞いただろ?」
「血吸う樹の妖怪だろ?」

何だ、結局教室しかも俺の席んとこで話すのか。
その方が俺は楽でいいけどさ〜。
てゆーか、こいつは何が言いたいんだ?

「じゃあ、狐のことも聞いただろ?」

聖は少し深刻そうな顔で言った。
俺はそんな聖の様子を気にすることなく、コクンを頷いた。

「樹木子って奴から助けてくれるんだろ? いい狐じゃん」

俺はあっけらかんと言った。
まぁ、よくしらないけど。

「狐は人を騙す。毎回とは限らないだろ。だから確かめに行くんだ。それに…もしあの方だったら…。とにかく、そいつがいい狐か確かめに行くんだ。だからお前も来い!!」

……ハイ?
何と強引で、理不尽で自己中な……。
聖はそうドドーンと言い放った。
日本海の荒波がバックに見えた気がした。



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