平成百鬼夜行〜風人伝〜


「……平……」

誰かが呼んでる声がする。
誰だ?

「おい!! 徹平!!」

何だかムカツキ度MAXになりそうな、この声は……!!

「起きろって言ってんだろ!!!」

俺はその声でガバっと目が覚めた。

「聖……」

やっぱり俺を呼んでいたのはムカツク奴だった。
あー目覚めわりぃ……。
起こしてもらうんだったら、美優さんみたいな人がいいよな。

「やっと起きたか、バカ!!」

聖が毒を吐くように言った。
そして、軽く俺の頭をポカっと叩いた。別に痛くはないが……やっぱり少しムカツイた。
俺はあたりを見回した。変な、ウネウネ動く木の近くではないみたいだ。
ちょっと、さっき起きたことを整理してみよう。
確か樹木子とかいうのに、捕まって……もうダメっぽい思ったら狐が現れて……。
そうだ! 狐だ!! 狐が助けてくれたんだ!!

「聖!! 狐が、銀色の狐がいた!!」
「ん? 何? それって俺のこと?」

聖とは別の声がした。
あれ?
ここに来たのは俺と聖だけだよな?
でもな、今ここには3人いる。
俺たちと同い年くらいの奴が、灰色の髪をした奴が。
誰だ、こいつ……。まさか!! 不審者!!?

「あ、紹介が遅れたね。俺は天狐の銀河。本来の姿はこっちさ!」

そいつは、そう言い軽々と宙返りをした。
そして……そいつの姿は銀色に輝く4本の尻尾がある狐の姿にかわった。
あ! さっきの狐じゃん!!
銀河はまた宙返りをし、人の姿に戻った。
ほぉ、これが化けるってことなのか。葉っぱは頭に乗せないのか?

「君のことは聖から聞いたよ。風太が見えたんだって? あ、俺、普段は風森に棲んでいて風太とは友達なんだ」

銀河がにぱっと笑った。
てか、勝ってに人のことしゃべるなよ、聖よ。

「あのさ、天狐って何だ? さっき言ってたやつ」

俺はおずおずと聞いた。
この銀河って奴はいい奴っぽそう。
勘だけどな。

「天狐っていうのはね、妖狐の一種だよ。妖狐ってのは、普通の狐が300年生き、霊狐となったものが妖狐になるんだ。妖狐には人に害をあたえるもの、幸福をあたえるものにわけられるんだ。前者が野狐。あの有名な金毛九尾狐も野狐だぜ。で、後者が善狐。天狐は善狐が1000年以上生きたものの姿ってわけ。わかった?」
「お、おう」

うん、多分わかった。何か複雑だなぁ……。
こうして、俺たちの樹木子を見ようは完遂されたのである。
妖怪って複雑。



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