平成百鬼夜行〜風人伝〜


そんなわけで、俺たちは立花神社に来た。
これが、ばーちゃん足速いんだ。俺より速いんじゃないか?
取り合えず、聖がいたから俺は事情を話したが……。

「雨のことだろ? もう、何人もの村人が頼みに来ている。それに、俺自身風森にも行った……」

聖は知っていた。ばーちゃんみたいのが、何人もいるんだな。だが、聖は暗い顔をした。

「どーした?」

俺がそう言うと、聖ははっとした顔をして、誰にも聞こえないような小さな声でこう言った。

「それが、風森に風太さんがいないんだ。銀河さんに聞いたらある日突然居なくなったと居場所も告げないでどこかへ行ってしまったらしい。で、銀河さんたちが言うにはこの間火人様が来たときに“高天原”へ来いと言われていたから、そこに行ったと思うって言ってた。お前も聞いてただろ?」
「あ、あれか。でも、あれってかなり前だぜ?」

俺は、何かを思い出すように言った。一ヶ月以上も前のことのはずだ。
あれ? ちょっと待て。何かひっかかるぞ。

「俺たち、風太がいなくなることを誰かに聞かなかったか? 火人ってのが現れる前に」

確か、随分前の話だ。まだ、俺が転入初日らへんの……。
聖も覚えがあるらしく、うーんと唸り思い出そうとしていた。そして

「鈴音さんだ!! 火人様が来る前、あの樹木子のあとだ! 確かに、そんなことを言ってた! 風太さんがもうすぐいなくなるかもって。それに、こんな事も言ってたぞ。俺は樹木子の出現について疑問に思っていたはずだ。そこに、鈴音さんが来て話してくれたんだ!! それで、土人様が関係しているとかどうとか……。風太さんが、ルールを破ったから目をつけられたとも言っていた!!」

聖は全ての辻褄があったという顔をした。さすがの、俺もわかった。

「確か……火人だっけ? あいつは1週間後に来いって言ってたよな? それで、風太は誰にも言わずに行き、土人ってのに捕まった? ってことか?」

俺は状況を整理した。聖も同意するかのように頷いた。
じゃあ、風太は今“高天原”のどこかに捕まってるってことでいいんだな。

「多分、今回のことは風太さんが居ないから、旱神はこの村に入ってくることができたんだ。今までは、風太さんが土地の妖怪以外は入ってこないように護ってたから。きっと、他にも妖怪が入ってきてるはずだ。だが、樹木子のときは何かがおかしかった。いくら、風太さんが護っていても、風太さんの結界をやぶれるものはいるからな」

そうなのか、だから風太の知り合い以外はいないのか。
そして、土人とかは風太の結界を破れる奴なんだ。
俺は、誰もいないのに袖を引かれたことを話した。どうやら、そいつは袖引き小僧っていう妖怪らしい。

「でも、どーするんだ? 風太がどこにいるか解っていても、今の現状は変わらない。雨を降らすにはどーすればいいんだ?」
「うーん、火人様がこの土地に来たことで、この土地の水分は減っている。どーすれば……」

俺たちはうーんと唸った。どうすればいいのかわからなかった。



 BACK|モドル|>>NEXT