平成百鬼夜行〜風人伝〜


丘は……とても風が強かった。さすが風森だけのことはあると思う。小雨は、丘の一番先端に立った。そして、この晴れ渡っている青空をぼーっと眺めていた。いや、ぼーっとしているのは俺か。

「なあ、どうやって龍神を呼ぶんだ?」

なかなか何も始めない小雨を見ながら、俺は聖に問うた。聖は真剣に小雨を見ていたため、何も言わなかった。しょうがないので、俺も真剣に小雨を見ることにした。
しばらくすると、小雨はどこからかジョウロを取り出し傘をくるくる回しながら歌いだした。小雨の周りはジョウロの水で雨が降ったように濡れていた。そして、小雨は竹トンボを飛ばすように、傘をおもいっきり空に飛ばした。傘はくるくる回りながら、空へ吸い込まれていった。そして、何も起こらなくなった。

「何も起こらないぞ?」

俺はどうなってるんだよというように、聖に言った。聖は傘の飛んで行った方向を見ていた。そして、突然

「ワン、ワン!!」

黒影が急に騒ぎ出した。俺は、腹でも減ったのか? といった感じに黒影を見た。

「徹平、お前はバカか? 空を見ろ」

聖がそのまま空を見ながら言った。バカとは何だ、バカとは。聖の指図に乗るなんて、嫌だったが俺はしぶしぶと空を見た。

「あ、戻ってきてる」

そう。さっきの傘が戻ってきたんだ。そして、その傘は再び小雨の手の中におさまった。そして、なにかその傘の柄の部分には、白いなにかにょろにょろしたものがまきついているように見た。だが、その白いものは地面に降りるとそこには、片目を前髪で隠し、帽子をかぶっている男の子が現れた。また、妖怪か?

「久那ノ神様の使いで来た。何用か?」

なんと、そいつは歳にあわない口調で俺たちに言った。なんと、なんと!!

「彼はね、白月(はくつき)くん。白蛇で龍神様の御使いなの」

小雨は俺たち、おもに俺にそう言った。しばらく小雨と白月は何かを話していたが、すぐに白月の方はいなくなってしまった。



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