平成百鬼夜行〜風人伝〜


そーいや、コイって食えるんだっけ?
聖の後をついてきた俺だが、俺ってば平平凡凡な中学生だからぶっちゃけ何もできないことに今気づいたよ。
ってか、もしかしたら邪魔だった?
なんていうか……、俺のせいで鯉倒せなかったらどうしよう。

「よし! 聖! 俺はここから見てるから早くやっーっておしまい!!」

俺は聖の邪魔にならないように、こそっと茂みの中に隠れた。顔はだしてるけど。

「いや、言われなくてもやるし……」

うっ……。聖のやつ、溜息つきやがった。
し、しょうがねぇーだろ!! 別に今になってビビッてるわけじゃないからな。

「さて、黒影。あんなバカはほっておいて……。あれ、食べていいよ」

聞き捨てならないセリフが聞こえたような気がしたが、今は置いておこう。
聖は黒影の頭をなで、黒影を鯉にけしかけた。皆、その様子を見ていたが、なんとまぁ……。
黒影のやつ、パクっと一口でその鯉を飲みこんじまった。その前に、一瞬巨大化したような気がしたが……?

「おい、お前いつまでそんなとこにいるんだ? 周囲が俺たちに注目してる。花の匂いで誤魔化してるとはいえ、バレない保証はないぞ。早く銀河さんたちのとこに戻るぞ」

聖はよくやったというように黒影の頭をなで、さっさと行ってしまった。いやいや、待てよ。俺を置いて行くなっ!!
銀河たちのとこに戻ると銀河と旦那さんが何か、口論してた。

「だーかーらー!! あの2人は森の新入りだってば! 風太の友達だよ!!」
「なら、何故山犬を使役しているのだ? 山犬は妖怪には憑かない」
「そんなの知らないよっ! おーっと、2人とも戻ってきてたのか。てか、聖あの黒影は怖すぎるぞ。俺の前では、あんなこと二度とやるなよ。俺は犬が嫌いだからなぁー、犬は狐を狩るんだぜ?」
「あんた、もう昔のことは忘れなさいな」

愚痴をいう銀河に鈴姉さんがそう言った。てか、旦那さんと銀河は何を口論してたんだろ? 2人は仲悪いのか?

「黒影は、怪我をしているところを助けたらついてきちゃったんです。俺と黒影は友達です」

聖は旦那さんがさっき銀河に問うていたことの答えを言った。その様子を朱璃さんがハラハラとみている。

「やれやれ、またはじまったねぇ。鬼童丸、徹平。あんたたちは顔をつっこむんじゃないよ。銀河と禰禰はいつも会うとこれなんだ。何より、禰禰は犬だしね。さっき、狛犬の当主といったが、犬族の当主といっても間違いないだろうね。それで、禰禰はあたしらの世界ではお偉いさんさぁ。いくら神だといっても流れ者の銀河とはプライドが違うのさ。そもそも銀河はもとは普通の狐だったからね。あちらさんは生まれながらに妖怪だから。そもそも、普通の生き物が妖怪化した奴らはあんまりあっちの世界には行かずにここにとどまることが多いね。だから、人間のおこぼれをもらうこともある。あいつらは違うんだよ。それに、仲が悪い理由は……朱璃のこともあるだろうね。朱璃は、神をまだ乗せてないから獅子になりきてれないけど、朱璃の父親与壱は立派な獅子で、今やほとんど高天原にいる。そんな父親が望んだことは娘の幸せな結婚。それで、見合いをしたんだよ。ここまで言えばわかるだろ?」

鈴姉さんは、旦那さんと銀河を横眼にみて、そう言った。てか、銀河が一方的っぽい気がするけど……、銀河子供っぽいぞ。

「禰禰は人間が嫌いってこと? 人間面白いけどなー。美味しいものいっぱいもってるし」

鬼童丸が頭に何かを思い浮かべながら言った。きっと、食べ物だろうな。

「鬼童丸、あんたちょっと論点がずれてるよ。徹平は解ったかい?」
「うん。銀河ってば朱璃さんが好きだったの?」
「そう。禰禰より、銀河の方が先に見合いをしたんだけどね。そのとき銀河はまだあんな子供の姿じゃなかったんだ。で、すっかり朱璃を好きになっちゃったの。でも、銀河は流れものだろ? だから与壱も迷ってたんだ。そこで、禰禰の話を聞き見合いさせたら2人とも即OKで、銀河との見合いは破談になったってわけさ」

俺たちは小声で話しているのと、銀河と旦那さんが口論してるから俺たちの話は聞こえてない。
そっかー、銀河にそんな過去があったとは……。

「これは、風太のことには関係ないけどね。風太は本来人間と関わってはいけないんだ、風太は土地神でもあるからね。それなのに風太は人間と関わりすぎてしまったのさ」

そんな話を鈴姉さんが話していたら、列が進み暫くして俺たちも舟に乗った。
また朱璃さんたちと一緒だ。



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