平成百鬼夜行〜風人伝〜


さて、閉じ込められた俺たち。いったいどうすればいいのだろうか。

「湖にはマナズ以外に何の妖怪がいるんですか?」

聖は銀河たちの方を見て言った。銀河がよくわからないのか、黒火さんの方を見た。

「俺が知る限りナマズ以外は、ウワバミと蟹坊主がいるな。会ったことはないが」

黒火さんは銀河の視線に答えるかのように、聖の質問に答えた。
だけど、俺にはさっぱりだ。ウワバミ? 蟹坊主? 皆、良い顔はしていないけど、ヤバイやつなのか?
うーん、聞きたいけどへたに聞いたら正体バレるかもしれないしな。

「そうすると泳いで帰るとかは出来ないねぇ。そいつらがいなくても泳いだりはしないけどね」

鈴姉さん。この人はいつでも鈴姉さん。相変わらずの鈴姉さん。てか、自己中なだけか?
にしても、そんなにヤバイ妖怪なのか? 湖に居るのは。

「お父さん、その妖怪はそんなに凶悪なの?」

黒火さんと一緒に来た女の子。小金ちゃんだっけ? 小学校の高学年くらいの。
その子が黒火さんにそう聞いた。てか、この2人って親子なんだ。そういえば、眼もとが似てるような気もする。

「って、小金はそんなこともしらないのか」

答えたのは黒火さんじゃなくて、銀河。

「ウワバミっていうのは蛇で、蟹坊主は蟹の背に人の顔がある奴だ!」

銀河は自信たっぷりにそう言った。蟹なんとかは人面蟹ってことか。
でも、銀河のは小金ちゃんの質問の答えになっていないと思うけど。

「銀河……それは答えじゃないよ。小金、ウワバミは息で生き物を気絶させることができる。蟹坊主は生きているものを食べる。そして、両方ともすごく凶暴だと言われているんだ。そしてとにかく凶悪なんだよ」

黒火さんが丁寧に説明してくれた。

「聖、知ってた?」

俺はこっそり聖に聞いた。聖は首を横に振った。
妖怪マニアでもある聖にも知らないことがあるのか。ふーん、ざまあみろ。

「全員静かにしたまえ」

急にさっきまで黙っていた旦那さんが俺たちに言った。
いったい何があったんだ? 俺にはまったくわからん。

「あたしにも聞こえるよ。銀河と朱璃はどうだい?」

鈴姉さんが銀河と朱璃さんの方を見た。2人はほぼ同時に頷いた。
皆、何か大真面目な顔をしてるけど。そして俺には何も聞こえない。耳はいいはずなんだけど。

「湖のところに誰かいるな」

再び旦那さん。そして、逃げた方がいいとも言った。
だけど、俺たちには逃げばもないし、どうしようって感じだ。俺と聖は人間だからよくわかんないけど、鬼童丸は何だか怯えているし、黒影は唸っている。
とりあえず、俺たちは旦那さんの言うとおり、逃げるというかこの場をはなれた。
そして、場を離れたあと、柱の隙間から水が入ってきていることに気づいた。
その水はおおきくなり、ついには柱を壊しなだれ込んできた。何だ? 誰か水難の相でもあるのか……?



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