平成百鬼夜行〜風人伝〜


湖の上には、恐ろしく綺麗な女の人がいた。
なんか、どっかの神話にあるような感じの女の人だ。

「水人! お前、風太をどこにやった!!」

銀河が女の人に向かって叫んだ。なんか、もしかしてまたピンチっぽい感じ?
 よくわかんないけど。もし、ピンチだったら、かなり唐突だな。
きっと、俺はもう、何が起きても驚かないぜ。

「あんた、風人の友達の狐でしょ? それは、こっちが聞きたいよ。あいつ、火人と一緒にどこかにいなくなっちまったのさ。それで、土人はかなり怒っちゃって、もしかしたら宴会に参加してるかもって思って来てみたけど、参加してないみたいだね」

水人さんは、はぁああと大きなため息をついた。
何か、ピンチじゃなさそう?
ていうか、風太、いなくなってるってどーゆうこと?

「あの時もそうさ。勝手に1人でぷらぷらと。だから、土人が怒るんだ」

水人さんは、すっかり呆れている感じ。
てか、この人ってあれだろ? 前に、鈴姉さんが言ってた。
何か、想像してたイメージと違うな? もっと怖そうなのをイメージしてたのに。

「い、いなくなってって、どこに!?」

銀河は驚いていた。鈴姉さんは呆れていた。
そりゃー、風太は捕まってるとか、そんな感じだと思ってたから。
でも、あの風太が大人しくしているとも思わなかったけど。
だって、風太だよ? 風だよ?

「もー、そんなの知らないわよ。私に聞かないで。風太探しはあんたたちに任せる。土人の相手するのも、疲れるし。土地も心配だし、私帰るから」

水人さんは、まるでストレスがたまったOLのような。
何か、困った上司に振り回されるOLって感じの。皆、水人の態度に、目が点になってる。

「風太さんに怒ってたんじゃないんですか?」

聖は変な顔をしていた。
聖が変な顔をしているのは、いつものことだけど、いつも以上に変な顔なんだ。
水人は、そんな変な顔の聖を見た。

「私は怒ってないわよ。土人が怒ってるの。土人が探して来いっていうから、探してたけど、それも、もうやめだわ」

水人は、またため息をついた。やっぱり、何かOLみたいなんですけど。
てか、案外、妖怪たちって人間くさいよな?
うーん、土人ってのも気になる。

「とにかく、私は帰るから、あと宜しく」

水人はそう言って、湖に沈んで行った。帰ったのかな?
なんか、去り際もあっさりしてて、本当になんか、ストレス溜まってそうだなぁって感じ。
妖怪はストレスがたまると髪とかが抜けたりしないのだろうか? 俺の親父みたいに。
あと、妖怪のストレス解消法ってのも気になる。てか、妖怪にもストレスってあったんだな。
銀河と鈴姉さんは、お互いに顔を見合わせた。そして、首を傾げた。
イメージと違うから、戸惑っているのかもしれない。でも、やっぱり悩んじゃうよな。



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