平成百鬼夜行〜風人伝〜


「さて、私たちはこれで帰らせてもらうよ」

掃除が終わり、ちょっと休憩しているときに、旦那さんがそう言った。

「そうだ、そうだ。さっさと帰れー!」

旦那さんが、帰ると言うと、銀河がすぐにそう言った。
もちろん、旦那さんは銀河を一切相手にしなかった。
うん、旦那さんの方がやっぱり大人だ。てか、銀河が子供すぎ?

「銀河、あんた黙ってなよ。悪いねぇ、掃除まで手伝ってもらっちゃったし。朱璃も悪いねぇ」
「いえ、楽しかったし、たまにはこんなハプニングもいいですよ」

鈴姉さんが申し訳なさそうに言うと、朱璃さんはニッコリと笑った。
心なしか銀河の顔がちょっと赤い気もするが。
て、銀河はまだ朱璃さんのことが好きなのか? 人妻なのに。

「朱璃、今度遊びに行ってもいい?」

銀河は少し、照れくさそうにそう言った。
銀河、諦めわるいなぁ。朱璃さんは、ニッコリと笑って頷いた。だけど、旦那さんは気にくわない顔をしていた。

「さぁ、朱璃。帰るぞ。では」

旦那さんは、朱璃さんの手を引き、俺たちにそう言うと、祠の向こうに広がる森に消えて行った。
朱璃さんは、俺たちに一礼して、旦那さんと一緒に消えた。
銀河は、2人が去った後を、なんとも言えない感じの顔で見ていた。

「あんた、諦めわるよ。鬼童丸もそー思うよねぇ?」

銀河のそんな様子を鈴姉さんがからかうように言った。
鬼童丸も、何だかわからないけど、頷き、銀河はちょっと傷ついたみたいだ。
何か、他人の恋愛事情って面白いよね。
聖はそんな経験がないのか、1人ポツンと孤立していた。


「さて、そろそろ風太のところに行こう。皆、祠に触りな」

銀河がいつもの銀河に戻ってそう言った。
鈴姉さんは、「それ、あたしが言ったんだよ」と軽く銀河のことを叩いた。
俺たちは、銀河の言うことに従い、祠に触った。

「で、この後はどうするんだ?」

銀河にくっついてる鬼童丸の頭を撫でながら、銀河が鈴姉さんに問うた。鬼童丸は嬉しそうにしてた。

「結局、解らないんなら初めっから仕切るんじゃないよ。確か、風太のいるとこに行きたいって言うのさ」

鈴姉さんが、そう言うと、祠が光り始めた。ちょっと、眩しい。てか、何で急に光りだしたの!?

「ま、まさか……今ので?」

銀河が、えーって感じで言った。
確かに、えーって感じだ。心の準備も何もしてない。
だって、今のは会話の一部だろ!? って、びっくりしたんだけど、聖もびっくりしたらしく、面白い顔をしていた。

「みたいだねぇ」

鈴姉さんは、いつもの調子で言った。
なんて、いうかさ、普通は、ちゃんと言ってから行くもんじゃないのー? 
そんなことを考えていたら、急に祠に引っ張られるような感覚がした。
触っている手を引っ張られてる感じ。しかも、結構強い力で。

「うわぁぁ!?」

そして、引っ張られたと思ったら、祠の中に吸い込まれたんだ!! 
そして、わけのわからないところを落ちて行った。しかも、真っ逆さまに。ちょっと気持ち悪くなった。
そして、どこかに落っことされた。ドスンと。これが、結構痛いんだ。



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