平成百鬼夜行〜風人伝〜
「あでっ! って、聖重い!!」
しかも、俺たちはつみあがる形で落っことされ、俺の上には聖がいた。
何で、聖? ちょっとムカついた。
てか、実際にこんなふうにつみあがることってあるんだなー。
「あ――――!!!!!」
聖が俺の上からどいているとき、前を見て、銀河が叫び声をあげた。
結構、うるさい。一体何に叫んだんだ? 俺は銀河の見ているところをみた。
「よぉ、お前たち。こんなとこで何してるんだ?」
「あ――!! 風太!!! って、それに火人っていう人!!」
そう。風太が椅子に座り、手を振って俺たちのことを見ていた。
鬼童丸は風太に抱きついた。
風太の隣には、火人が居て、向かいには見たことのない男の人が本を読んでいた。
どうやら、どこかの家の中に落とされたみたいだ。
俺が思うに、ここはその見たことのない人の家だと思う。てか、ちょっと散らかってんな。
「って、ここ。万屋の氷鴈(ひかり)の家じゃないのさ。風太、あんた何でこんなとこにいるんだい?」
鈴姉さんは相変わらずの調子で、風太に聞いた。
きっと、氷鴈ってのは、見たことのない人のことだろう。
「ん? 土人から逃げてきたんだよ。あいつ、しつこいんだ。俺が人間の女の子を好きになった時もそうだったし」
「え、風太さんって人間の子に恋しちゃったことがあるんですか?」
聖が問うた。風太はニッコリと笑った。あるってことか。そして、昔を懐かしむように話してくれた。
「今より、ずーっと昔のこと。俺は1人の女の子を好きになっちゃったんだよ。向こうも俺のことを好きになってくれて、俺に名前をくれたんだ。風太っていうね。しばらくは、2人で一緒にいたんだけど、女の子は結構な家柄の子でさ、悲恋に終わったってわけ。で、それが土人にバレちゃってさ、かなりしつこかったんだよ。うるさいし」
風太は恥ずかしそうに笑った。
長くなるかと思ったら、案外短かったな。
でも、風太にそんな過去があったなんて、びっくり。
妖怪が人間を好きになったらお互いはどう思うんだろう? 寿命も種族も違うけど、結ばれちゃった人とかいるのかな?
子供とかはどうなるんだろう? 俺は、ちょっとだけ気になった。
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