平成百鬼夜行〜風人伝〜


俺はその日ずっとワクワクしていた。
都会にいた時だってこんなワクワク味わった事がない。
もしかしたら、今まで生きていた中で一番のワクワクだったかもしれない。
大げさかもしれないけど、ホント俺はそう思ったんだ。
だからかどうかしらないけど、次の日俺は畑の仕事を手伝った。
手伝ってるって言っても何やってるかわからないからぐちゃぐちゃだ。


「いやー徹平が手伝うなんて珍しいなー」

この、キラメク汗を白いタオルで拭いてる中年が、俺のダメ親父。
まさか、リストラにあうなんて今でも信じられないよな…。
でも、そのリストラによって俺は風太に会えたんだ。
そしてこんなにもワクワクしてるんだ。だからあんまり悪く言うのはよそう。
親父気にするし。

「おはようございます」

声が聞こえた。
俺は仕事をしている手を休め、畑の隣の道を歩いてくるそいつを見た。

「やぁ、君は…立花神社の息子さんだったよね?」

親父もそいつを見た。
そいつは、小柄な男子でそいつには似合わず黒い大きな犬を連れていた。
そいつは、親父の問いにたいしてコクンと頷いた。

「誰?」

俺はそいつが遠ざかったのを見て、親父に聞いた。

「何だ、知らないのか? 立花神社の聖(ひじり)くんだよ。お前が通う学校の子だ。ここは都会みたいに子供も多くないからもしかしたら同じクラスになるかもしれないな」
「あいつ…あんな小さいのに俺と同い年なのか!!?」

俺はちょっとびっくりした。
だって、都会にはあんなに小さい子いなかったぞ!!? 俺だってあんなに小さくない。
もしかしたらさっきの奴は翔子より小さいかもしれない。いや、同じくらいか?

「そうだよ。仲良くしなよ」

親父は、わっはっはっと笑った。
別にそこは笑うとこじゃないだろ、ダメ親父。
てゆーか…俺、明日学校じゃん!! 何にも用意してねーよ。
どーすんだよ、俺!!?

「そうだ。今日は立花神社に行ってくるといい。昨日は風森に行ったんだろ? なら、あそこも行かなきゃな」

親父が急に「これは名案だ!」とでも言うように言った。
いや、だから俺明日から学校だから!! なんて俺の心情も知らずに、親父は俺の背中を押した。

こうして、畑仕事が向か無い俺はダメ親父によって畑から追い出された。



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