平成百鬼夜行〜風人伝〜


学校が始まった。

「徹平! ほら、これもって!」

母さんがせわしなく働いている。
母さんは学ランすがたの俺に弁当を持たせた。

「お兄ちゃん! 早く!! 遅れちゃうよ!」

翔子が玄関で騒いでいる。
翔子の隣には親父がいた。
俺はいそいで運動靴をはいた。

「って! 親父! そのかっこで行くのかよ!?」

俺はダメ親父の服装を見て、悲鳴に近い声をあげた。

「ん? ダメか?」

親父はきょとんとした顔をした。
ダメか? ってダメに決まってるだろ!!
ポロシャツっていうかいつも農作業やってる服装なんて!!

「ダメに決まってるだろ。それよりも、そのキラメク汗をどうにかしろ」

俺はため息をついた。
これだから、こんなダメ親父だからリストラされるんだよ…。
っと、これは言っちゃいけない約束だったな。

「そうか…。じゃあ、一応着替えてくるか……」

ダメ親父はぶつぶつと何かを言い、家の中に戻った。
翔子がそんなダメ親父を「早く! 早く!」とせかしている。

暫くして、ダメ親父は…まぁ、一応普通の服装で来た。

「さぁ! これでいいだろう。行くぞ、2人とも」

親父はキラメク笑顔で言った。
どうやらキラメク汗はちゃんと拭いたみたいだな。
俺たちは家を出た。

「ねぇ、お父さん。こっちの学校ってどんな感じなの? やっぱり人数少ないの?」

翔子がワクワクした感じで聞いた。

「そうだな。小学校は6年生と5年生は合同だ。中学は、1学年1クラスだけだぞ」

親父は懐かしむように言った。そんなのはどうでもいい。
1クラスってことは…あの、聖と一緒のクラスか? 嫌だ…。
俺はため息をついて、空を見上げた。

「あ!!」

俺は思わず声をあげた。
向こうは気付いてないと思うが、風太が風にのって飛んでいたような気がした。

「どうした?」

親父が俺を見た。
俺はなんでもないと首を横に振った。
うん、そうしよう。
学校終わったら、森に行ってみよう。



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