10.最終曲


1年前、ボクはたくさんの想いを抱いてここに来た。
夢、希望、無謀、絶望を抱いてこの地に来た。
でも、今のボクは?
今のボクはどんな想いでこの地に立っている?
ここは新しい出発地点。


あの出来事から数日が過ぎた。

「おーい、マヤ!」

ヤマトが呼んでる。
そろそろ行かなきゃ!!

「今行くよ、ヤマト」

ボクは急いでヤマトの方に駆け寄った。
ナツキの姿が見えない。
どうしたんだろう?

「ヤマト、ナツキは?」

ヤマトはため息をついた。
そして…大きな木を指差した。

「上だ。呼んできてくれるか?」

ヤマトはヘラリと笑った。
ボクはナツキの居る場所を見た。

「わかった」

ボクは思いっ切りナツキがいるところ目指してジャンプした。
ナツキは空を見ていた。

「ナツキ、ヤマトがそろそろ行くって…」

ナツキは返事をしなかった。
そして急に変なことを言い出した。

「オレって…どこに進んでいるんだろうなぁ〜」
「え?」

ボクは自然に声が漏れた。
そして、ナツキの方を見た。

「ん。なんでもない。オレはもう青空を見つけたからさ。オレさ、ヤマトに言われてるんだ。絶対死んじゃいけないって。あいつ…バカだよな。オレたちの中ではそれは壊れるって言うのにな」
「…ナツキ?」

ナツキは笑った。

「オレさ、あんたとは違う境界線を渡ってたんだ。どっかで博士の事憎めなかった。あんなヒトでもオレの生みの親だからさ。だから…少しでも繋がりが欲しいと思い、あいつらと一緒にいた。でもさ、あんたはヤマトを選んだ。あんたは凄いよ。あれだけ辛い痛い目にあったのに自我を…あんたでいられたんだから。オレはあんたもヤマトも好きだよ? あんたに会えなかったらオレはこれに気付かなかった。気付こうとしなかった。だから…あんたに会えてよかったよ。ありがとなっ!」

ボクはこのままナツキが何処か、遠くへ行ってしまいそうな気がした。

「おーい!! 早くしろ―!!」

ヤマトが下で叫んでいる。
少しイライラしてるように見えた。

「行こう!! ナツキ、ボクらの旅に!! ボクらの夢…ヒトになるっていう大きな夢を叶えにいこう!!」

ボクはナツキの手をひいた。

「おうっ!」

ナツキは笑った。
勿論ボクだって。

ボクらの旅は終わらない。
だって…そうだろ?
この世に生を受けたものは皆どこかに旅しているんだ。
きっと、ボクたちはあの綺麗で澄んだ青空を探す為に旅をしている。
それを見つけたらまた…新しい旅に行くんだ。
今度は…大きな夢を叶える為に。



――――ありがとう。皆。



――――ありがとう、ヤマト。ボクにこの道を教えてくれて……ありがとう。




END




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完結です。
そもそも、これは短編で書こうかな〜っと思っていたものでした。
が、結局無理なのでシリーズになりました。

さて、マヤは兵器として作られ、たくさんの人を傷つけてきました。
でもいつしかそのマヤに当たり前となっていた行為に疑問を持ち、自分も他のヒトみたいになりたいと思っていきます。
そして、旅さきでヤマトと出会い、その思いは大きくなります。
最後には自分を作ってくれた博士を裏切るような行動にでます。

ナツキとヤマト視点の話もありますが、これの主人公はあくまでもマヤです。
自分の意思で行動するという事が、どんなに大切かというのをマヤは知ることが出来ました。
そして、彼はヤマトという存在があったからこそ、這い上がってこれたのです。
ヤマトはマヤにとっても、そしてナツキにとっても救いの存在だったと思います。

余談ですが、ヒミコはシリアスむきではないですね。

by銀

2005.11.6