本を書いた幽霊の話


嘘かホントか解らぬ話。

本をずっと書きたかった青年がおりました。
その青年は、貧困で本を出せずに若いうちに死んでしまいました。
青年は幽霊になりました。誰にも気づかれない幽霊に。気付かれても怖がられる幽霊に。
それでも、青年は本を書きたいと強く思っておりました。





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オーリーは今日も歩く。
白い犬の愛犬、ブランシェとともに。





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青年は、ペンを持ちました。幽霊なのに、ペンが持てたのです。
神様が青年の思いを叶えてくれたのでしょうか?
青年は、壁に自分のことや、思いを綴っていきました。





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オーリーはある国についた。
ブランシェとともに。





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ある日、青年の書いた話を、男の人が見に来ました。
毎日のように綴られる物語として、青年の書いたものは有名になったのです。
青年は書き続けました。





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オーリーはその国で壁を見上げる。
ブランシェとともに。





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青年は、ついに壁いっぱいに物語を書き終えました。
生前の話と幽霊になってからの話。そして、今の思い。
青年はありったけの思いを込めて、物語を書き終えました。
それを、この間の男の人が見ていました。





***





オーリーは壁一面に書かれた物語を読む。
ブランシェとともに。





***





男の人は、その壁に書かれた物語を書きうつしました。一文字一文字確認しながら。
書きうつすのに、かなりの時間がかかりましたが、男の人は書きうつしたのです。
男の人は出版社の人でした。
そして、青年が書いた本を出版したのです。
もちろん、作者は不明として。





***





幽霊となった青年の話。
死んでも夢を叶えたかった青年の話。
青年は、自分の物語が出版されたことは知りません。
そのまえに、還ってしまったのです。
ですが、青年の物語は未だ壁に残されています。
雨にぬれ、文字が読めなくなった今でも残っています。





***





オーリーは壁の文字を見る。
ブランシェとともに。
夢を叶えた青年に思いを馳せながら。



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