卑怯と呼ばれた騎士の話


嘘かホントか解らぬ話。


ある国に卑怯と呼ばれた騎士がおりました。
ある戦いに行き、その戦いを怖いと言い、逃げていたら卑怯だと呼ばれたのです。
騎士はそれでも、満足でした。





***





オーリーは今日も歩く。
白い犬の愛犬、ブランシェとともに。





***





騎士は戦うのが嫌なのです。卑怯だとののしられるのも、嫌でした。
そのため、騎士は家に閉じこもっていました。
家に石を投げられたりしましたが、騎士は家から出ませんでした。
戦うのが嫌いだからです。





***





オーリーはある国についた。
ブランシェとともに。





***





騎士の国は戦いが絶えない国でした。次から次へと戦いは起こりました。
騎士は知っていたのです。この戦いが無駄なことを。
そのため、家に閉じこもっていたのです。戦いが終わるまで、卑怯だと呼ばれても。





***





オーリーはその村で墓地へと訪れる。
ブランシェとともに。





***





戦いが終わったあとも、誰も騎士を理解してくれる人はいませんでした。
戦うのが怖いと訴えていた騎士の心は誰にも理解されなかったのです。
騎士は1人になりました。それでも、家の中にいたのです。
誰も理解しなくても、自分が理解していればいいと思っていたのです。
***





オーリーは墓地にある小さな石を見る。
ブランシェとともに。





***





騎士は、誰も知らないうちにたった1人で死んでしまったのです。
いつ死んだのかは誰もわかりません。本当にいつのまにか死んでいたのです。
しかし、騎士は理解していました。自分がいつ死んだのか。
そして、それでいいと思っていたのです。
ですが、騎士の心は今の人たちには少し解るような気がするみたいです。戦うのが怖いということが。





***





卑怯と呼ばれた騎士の話。
戦うのが怖いと言った騎士の話。
誰にも理解されなかった騎士の話。
騎士の心はやっと、今になって理解され、戦いはなくなりました。
今の人は騎士の顔も、騎士の心も知りません。ですが、やっと理解されたのです。
小さな石の下で眠っている騎士はどう思っているのでしょうか?
今の現状を理解しているのでしょうか?
きっと、理解しているでしょう。





***





オーリーは小さな石の前で、お辞儀をする。
ブランシェとともに。
勇敢な騎士に思い馳せながら。



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