太陽を見たもぐらの話


光が見たい。
太陽がどうしても見たいんだ。


ある所に太陽が見たくてしょうがないもぐらがいました。
ですが、このもぐらは視力がほとんどありません。それでも、太陽を見たいと必死だったのです。
私はこのもぐらに会ったことがあります。

「君は目が見えないのにどうやって太陽を見るんだい?」

私がそう問いかけるともぐらは、私の声のする方に顔を向けました。

「あんたは旅人さんかい? ならひとつお願いがあるのだが。俺のこの小さな目を引き裂いて大きくしてもらえないか? そうすれば、この弱い視力でも、見えると思うんだ」

私はもぐらがメチャクチャなことを言っていると思いました。
目を広げようが、目が見えるようにはならない。

「頼むよ、旅人さん。バカなことをいっているのは分かっているんだ。でも、やってみなきゃわからないだろ?」

私にはもぐらが自虐的な笑みを浮かべたように見えた。

「だけど、私にはそんなことできないよ。いくら君の願いでも、そんなことはできない」

私はそうきっぱりと断り、次の旅に出た。


その後、あのもぐらの噂を聞いた。
もぐらは、太陽が見えないなら太陽に近づこうとしたと聞いた。
そして、イカロスのまねをして翼を作ったと。そして、太陽の光を見たと。


もぐらは自分の夢をかなえた。
私もわがままを言い、自分の夢をかなえてきた。
だが、それももう終えるとしよう。


今度は、子供たちの夢を見守る番だ。
ブランシェとともに。



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