スノードームが欲しかった猫の話


ある街、のある店。
その店の前にはいつも、猫がいた。
猫はウィンドウに飾ってあるスノードームを見ていた。いつも見ていた。
道に座り、いつも見ていた。



店の店主もそれに気付いていた。


それは、今も変わっていなかった。この街を旅立って帰ってきたいまでも。
猫はスノードームを見ていた。

「お前はなんでここにいつもいて、スノードームを見ているんだ?」

そう猫に問うと、猫は「にゃー」とだけ鳴いた。そして、スノードームを見ていた。



猫の見ているそのスノードームに関心がわき、お店の中に入り近くで見た。
よくあるスノードーム。街があり、雪が降っている。
そして、その中に猫がいた。あの猫とそっくりな猫が。



次の日、この街に雪が降っていた。まるで、誰かがスノードームをさかさにしたように。
そして気付いた。スノードームはこの街そっくりであることに。
だけど、ここはスノードームの中ではない。

「お前はあのスノードームを近くで見たいのかい?」

そう猫に問うと、猫はまた「にゃー」と鳴いた。



猫はこのスノードームに何を見ているのだろうか。
それが知りたくて。スノードームを買い、猫に与えた。
猫は顔をくっつけてスノードームをじっと覗きこんでいた。



そして、次の日猫はスノードームとともにいなくなっていた。



猫の考えていることなんて、猫にしかわからないが、猫はきっと違う世界を見ていたのかもしれない。
そして、この世界はまるでスノードームによく似ていると思ったのかもしれない。



またあの猫に会えたら問うてみようと思う。



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