祈りを忘れた天使の話


さて、オーリーはたくさんの物語を書いているということを皆が知っている。
その中の1つがこの、オーレリアン物語の1つになっていることは誰も知らないだろう。
この話はオーリーがとても気に入っている話しだ。
そのため、オーレリアン物語として知っている人は少ないが、この話だけを知っている人はとても多い。オーリー自身も、この話を自分自身でもよく読んでいた。





***





あるところに1人の天使がいた。その天使はその中でも、異端な存在であった。
普通の天使というものは神に祈りを捧げるものであり、祈りは教えられなくても覚えているものだった。
そう、普通は魂が覚えているのだがその天使の魂は祈りを覚えていなかったのである。

「どうして神様に祈らないの?」

何も知らない1人の天使がそう問うた。その天使はただただ黙っているだけだった。
天使はいつも不満を抱いていた。自分はなにも悪くないのに、どうして悪くいわれなくてはならないのか。
つねに不満を抱いていたが、天使は我慢していた。


天使には、自分しかわからない言葉があった。天使にも、その言葉の意味は解らない。
そして、その言葉は声に出しても声にならず音になる言葉であった。

「――――」

天使は今日もその言葉を発してみる。
そうすると、花の蕾が膨らみ、花開く。鳥はさえずり、まるで春の祭典のようになる。
天使はそれがとてもうれしかった。もしかしたらこれが、祈りなのかと。


大人になっても相変わらず天使は祈りの言葉は忘れ、覚えられず春の祭典の中にいた。





***





オーリーはこの話が好きだ。
それは数ある話の中で、この話が一番短いからだ。終わったあとにブランシェと一緒にいられる時間が長いから。
そして、何より春の祭典というものが好きだった。



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