地位を捨てた王女の話


昔々の出来事です。1人の若い王女がおりました。
王女はその国の1人娘であり、国を継がなければなりません。ですが、王女は恋をしました。1年にほんの1回だけ帰ってくる幼馴染に。
その幼馴染もまた王女に恋をしました。この恋はいつしか愛に変わっていきました。このとき、2人はまだ15歳でした。
だが、ある日王女の許婚だと言う人が現れました。その男は親同士が勝手に決めた許婚であったのです。王女はその男と結婚しなければなりませんでした。

「私……あんな男のものになりたくない……」

王女は旅から帰ってきた幼馴染にそう言いました。幼馴染は白い子犬をつれていました。

「でも、君はこの国を継がなきゃ」

幼馴染はそう言いました。ですが、幼馴染も本当はすごく嫌だったのです。王女がどこの男とも知らない人のものになるなんて。

「地位なんていらないわ。貴方と一緒にいられるなら誰にでもくれてやる」

王女は親に結婚は嫌だと言いました。しかし、王女の親……この国の王は妻を亡くしているせいか厳しくまじめな人で、そしてなにより娘を幸せにというのが妻との約束でもあり、自分もそれを望んでいたので聞き入れませんでした。
王様というのは大変なもので、娘のことも国のことも考えなければならないのです。王様も王女の想いは知っていたのです。ですが、身分が違いすぎることもあり、受け入れられないのです。



でも、ある日事件は起きたのです。
王女は夜、泣いていました。夫となるべく人が自分の屋敷で開いた仮面舞踏会に呼ばれたのです。だが、それは今若い人たちの間ではやっている乱交パーティーのようなものだったのです。
王女はそれを知らず、必至で逃げました。逃げて逃げて、逃げました。ですが、王女は逃げ切れず乱暴されてしまったのです。
相手は夫となるべき男ではありませんでした。まったくの知らない人で、夫となるべき男はそうゆうのが好きなのか、楽しそうに見ていました。
王様はこの男の性格を知らなかったのです。親たちはお互いの家柄で決めてしまったのです。この時代、こうゆう政略結婚のようなものは珍しいことではありませんでした。

「助けてっ……!!」

王女は夫となるべき男に助けを求めました。ですが、男は見ているだけです。そして、こう言ったのです。

「君はあの旅人が好きだね。でも、そんなことは許されないことだ。君は僕のものなんだから。そんなことをしたらこれでどうなるか解ったね? あんな男のことは忘れさせてあげるよ」

さらに、男が集まってきました。王女は初めてで、王女はここが地獄のように思えました。快楽も感じませんでした。
全てが終わり、解放されたあと王女は泣くことしかできませんでした。ですが、いつまでも泣いていても何も変わりません。王女は涙を拭い走り出しました。
ちょうど、幼馴染は旅立つところでした。

「どうしたの!!?」

幼馴染は王女のいつもと違う様子に気づきました。王女は服が破れていました。
幼馴染は自分の上着を着せてあげました。王女は幼馴染に抱きつきました。

「私も、私も……一緒に連れて行ってっ!!」

王女はまた泣いていました。幼馴染はそんな王女を優しく抱きしめました。

「……解った。ぜったい、守るよ」

こうして2人と白い子犬は寄り添い、国を捨て旅にでたのです。





***





月に1度オーリーは家に帰ることになっている。オーリーの家は人里離れたところにあり、自給自足で生活している。
「ただいま」

オーリーがそう帰ると、小さいころから一緒であった妻と、2人の子供が迎えてくれた。
暫く妻とブランシェで旅をし、子供が出来てここに家を建てた。
それでもオーリーは旅を続けている。それがオーリーの仕事でもあるから。家族との約束をまもりながら、旅をしている。

「しばらくは家にいるよ。本もだいぶ売れたしね」

オーリーがそう言うと、どこか貴賓漂う奥さんはにっこりと微笑みオーリーに抱きついた。
オーリーもそれを優しく抱きしめる。
まるで、あの日のように。



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