カノープス


休みが終わっちゃうのは何か寂しいね。それが長期休みじゃなくても、寂しい。
学校は嫌いじゃないけど、授業は退屈。僕は学校であくびばっかりしていたよ。だって、よくわからないんだもの。
ポラリスに教わった方が理解できる。結局、宿題も間違えだらけだったし。
でも、今日はポラリスとポムじいさんの映画館に行く約束をしているんだ。
これはポラリスが今日の朝、学校を出る前に突然言って来た。「ポムじいさんの映画館に行こう」って。
もっと早く言えば昨日とか行ったのにって思ったけど、ポムじいさんの映画館は昨日休みだったんだ。

二年前と変わらない景色。景色はそう簡単に変わるものではない。でも、僕たちは確実に変わってきている。
背だって伸びたし、友達も増えた。
だけど、ベラトリックスだけは止まっているように見える。二年前、オリオンが居なくなったあの日から。

ポムじいさんは何も変わっていなかったね。相変わらずのポムじいさん。
映画館は相変わらずお客は少なくて、相変わらずポムじいさんは意地悪だ。
何だろうな、別に今日何の映画がやるとかチェックはしていなかったんだけど、僕たちが見た映画は、 あの時、魔法のチケットで中に入った映画だった。
これって、運命なのかなぁ。もしかして何か起こるのかなぁ。

「おい、あの小僧はどうした」

帰る時、僕たちはそうポムじいさんに呼び止められた。ポムじいさん、僕たちのこと覚えている? まさかね。

「ほら、あの小僧だ! 髪を縛っていて! 最近全く見かけないぞ!」

ポムじいさん、僕たちが中々答えないからイライラし始めた。
もしかして、もしかしなくても、あの小僧ってオリオンのことなのかな? じゃあ、やっぱり僕たちのことも覚えているってこと?

「オリオンは……ちょっと、出かけています」

ポラリスが、曖昧に答えた。何だか少し寂しくなった。
ポムじいさんがオリオンや僕たちのことを覚えていたのは、驚いたし、嬉しかったけど、何だか……胸が苦しくなった。



BACK|モドル|>>NEXT